注意欠如多動症（ADHD）とは？
注意欠如多動症（ADHD）は、集中力の維持が難しい「不注意」、じっとしていられない「多動性」、衝動的な行動をとる「衝動性」という3つの特性を持つ神経発達症の一つです。かつては子どもの病気と考えられていましたが、近年では大人にも見られることが分かり、社会的な理解も進んでいます。
注意欠如多動症（ADHD）は単なる「落ち着きがない性格」や「努力不足」ではなく、脳の特性によるものであり、適切なサポートが必要です。本コラムでは、注意欠如多動症（ADHD）の特徴や原因、診断方法、治療法、そして日常生活での対処法について詳しく解説します。
注意欠如多動症（ADHD）の主な症状
不注意
注意欠如多動症（ADHD）の不注意特性を持つ人は、以下のような傾向があります。
- 集中力が続かない
- 忘れ物やなくし物が多い
- 話を聞いていないように見える
- 課題や仕事の計画を立てるのが苦手
- 期限を守るのが難しい
多動性
多動性が強い人は、以下のような行動を示します。
- じっと座っているのが苦手
- つい手や足を動かしてしまう
- 過剰におしゃべりをする
- 衝動的に立ち上がってしまう
衝動性
衝動性の特性がある人は、以下のような傾向があります。
- 相手の話を最後まで聞かずに話し出す
- 思いつきで行動し、後悔することが多い
- 感情のコントロールが苦手
- ギャンブルや買い物での衝動的な出費が多い
これらの症状が日常生活に影響を及ぼす場合、注意欠如多動症（ADHD）の可能性を考える必要があります。
注意欠如多動症（ADHD）の原因とメカニズム
注意欠如多動症（ADHD）の原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関係していると考えられています。
脳の神経伝達物質の影響
注意欠如多動症（ADHD）の人は、脳内の「ドーパミン」や「ノルアドレナリン」の働きが通常とは異なることが分かっています。これにより、注意力や感情のコントロールが難しくなると考えられています。
遺伝的要因
注意欠如多動症（ADHD）は遺伝的要素が強いとされ、家族内で発症することが多いと報告されています。
環境要因
出生時の低体重や早産、母親の妊娠中の喫煙・飲酒などが影響する可能性も指摘されています。
注意欠如多動症（ADHD）の影響と課題
ADHDの症状は、以下のような場面で影響を及ぼします。
学業や仕事での困難
- 宿題や課題の締切を守るのが難しい
- 作業に集中できずミスが多くなる
- 計画を立てて行動するのが苦手
人間関係の課題
- 相手の話を遮ってしまう
- 空気を読むのが苦手
- 予定を忘れがちでトラブルになる
精神的ストレスや二次障害
- 自信を失いやすい
- うつ病や不安障害を併発しやすい
注意欠如多動症（ADHD）の診断方法
注意欠如多動症（ADHD）の診断は、医師の問診や行動観察を通じて行われます。
問診とチェックリスト
注意欠如多動症（ADHD）の診断基準を基に、日常生活の困難さを評価します。
専門的な検査
知能検査や注意力テストなどを組み合わせて診断を行います。
注意欠如多動症（ADHD）の治療と対処法
注意欠如多動症（ADHD）の治療には、薬物療法と非薬物療法があります。
薬物療法
- 中枢神経刺激薬（メチルフェニデートなど）
- 非刺激薬（アトモキセチンなど）
認知行動療法
習慣を身につけるためのトレーニングを行います。
環境調整
- タスクを細分化する
- スケジュール管理を強化する
- リマインダーを活用する
注意欠如多動症（ADHD）とうまく付き合うために
ADHDの特性を理解し、適切な対策を講じることで、より良い生活が送れるようになります。
家族や周囲のサポートの大切さ
- 理解ある環境を整える
- 無理に矯正しない
仕事の工夫
- 短時間で集中できる環境を作る
- 優先順位を明確にする
自己理解と自己受容
- 自分の特性を知り、向き合う
- 得意なことを活かす
まとめ
注意欠如多動症（ADHD）は適切なサポートを受けることで改善が可能で、薬物療法や認知行動療法、環境調整を組み合わせることが有効です。自分の特性を理解し、生活に合わせた対策をとることで、より効率的に日常生活を送ることができます。早期に適切な対処を行うことが、症状の軽減と生活の質向上に繋がります。
（出典：国立精神・神経医療研究センター ADHD（注意欠如・多動症））
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