うつ病とは?
うつ病とは、気分の落ち込みや興味・喜びの喪失が長期間続く精神疾患です。単なる一時的な気分の変化ではなく、日常生活や社会生活に大きな支障をもたらします。
うつ病の症状は、心理的なものだけでなく、身体的な症状も伴うことが特徴です。仕事や家事が手につかなくなるほどの倦怠感や、食欲不振、不眠などが続くこともあります。
うつ病の主な症状
最近、「気分が沈む日が続く」「やる気が出ない」「体が重い」──そんな不調を感じていませんか?
誰にでも気分が落ち込む日はありますが、それが長く続いている場合、うつ病の可能性もあります。
うつ病は、心の病気であると同時に、体にもさまざまな影響を及ぼす疾患です。
ここでは、うつ病に見られる代表的な症状を、精神的なものと身体的なものに分けてご紹介します。
精神的な症状
● 気分の落ち込みが続く
一日中、憂うつな気分が続く。朝から何もする気が起きず、何もかもが重たく感じる──このような状態が2週間以上続いている場合は注意が必要です。
● 何をしても楽しくない
以前は楽しめていた趣味や人との会話、食事などに喜びを感じられなくなります。
● 集中力・判断力の低下
仕事や家事、勉強が手につかず、物事に集中できなくなる。普段なら迷わずできていたことに時間がかかるようになります。
● 自己否定感・罪悪感
「自分は役に立たない」「何をやってもダメ」といった考えが頭を離れず、過剰に自分を責めてしまいます。
● 将来に対する希望が持てない
「何をしても意味がない」と感じたり、「消えてしまいたい」と思うほど思いつめることもあります。
身体的な症状
● 食欲や体重の変化
食べられなくなる、あるいは過食に走るなど、食欲に大きな変化が見られます。結果として、急激に体重が減ったり増えたりすることもあります。
● 睡眠の異常
眠れない(不眠)、寝つけない、何度も目が覚める、逆に寝すぎてしまう(過眠)といった睡眠リズムの乱れが続きます。
● 慢性的な疲労感
十分に眠っても疲れが取れない。体が鉛のように重く感じる。外出する気力もわかず、ベッドから起き上がるのがつらくなります。
● 身体の痛みや不調
頭痛、肩こり、腹痛、便秘、動悸などの症状が現れることも。検査をしても身体的な異常が見つからず、長期間放置されてしまうケースもあります。
うつ病は、心の症状と身体の症状が複合的に現れる病気です。
「疲れているだけ」「年齢のせい」と我慢してしまい、悪化させてしまう方も少なくありません。
もし今、心や体にいつもと違うサインを感じているなら、それはあなた自身を守るための大切なサインかもしれません。
うつ病の原因
うつ病は、「これが原因です」と一言で説明できる病気ではありません。
実際には、心理的な負担、生まれ持った体質、ホルモンの変化、環境の影響など、さまざまな要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
このコラムでは、うつ病の原因として知られている主な要素を、心理的要因・生物学的要因・環境要因の3つに分けて詳しくご紹介します。
心理的要因
● 強いストレス(職場・家庭・人間関係など)
日常生活の中で感じる強いストレスは、うつ病の発症要因のひとつです。
職場での過重労働、人間関係のトラブル、家庭内の問題などが続くと、自律神経のバランスが崩れ、心身の不調につながる可能性があります。
慢性的なストレスを抱えている方ほど、無理をしすぎないこと・こまめに発散することが大切です。
● 過去のトラウマ体験
事故、虐待、いじめ、親しい人との死別など、過去に受けた強い心の傷(トラウマ)は、現在の精神状態に影響を及ぼすことがあります。
突然フラッシュバックが起きたり、似たような状況で強い不安を感じたりすることも。
心の奥に抑え込んでいる感情に気づき、丁寧に扱うためには、カウンセリングなど専門的な支援が役立ちます。
● パーソナリティ傾向(完璧主義・自己犠牲など)
「ちゃんとしなければ」「期待に応えなければ」と自分に厳しすぎる人ほど、うつ病になりやすい傾向があります。
完璧を求めすぎたり、他人を優先しすぎて自分を後回しにしていると、知らないうちにストレスが蓄積されてしまいます。
「ほどほどでもいい」「自分をいたわってもいい」という視点が予防につながります。
生物学的要因
● 神経伝達物質のバランスの乱れ
うつ病は、セロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミンといった脳内物質の働きが乱れることによって起こるとも言われています。
これらの物質は、気分や意欲、集中力をコントロールする役割を持っており、
バランスが崩れると、不安感や落ち込み、無気力といった症状が現れやすくなります。
● 遺伝的な体質
うつ病には、家族歴が関係する可能性も指摘されています。
親や兄弟姉妹に精神疾患の既往があると、発症リスクがわずかに高まる傾向がありますが、必ず遺伝するわけではありません。
生活環境やストレスへの対処力次第で、リスクを軽減することは可能です。
● ホルモンバランスの変化(特に女性)
女性は、月経・妊娠・出産・更年期など、ライフステージごとにホルモンバランスが大きく変動します。
エストロゲンやプロゲステロンといったホルモンの変化は、脳内の神経伝達物質にも影響を及ぼしやすく、気分の変動やうつ症状を引き起こす要因となります。
環境要因
● 過労・ハラスメントなど職場環境の問題
長時間労働、休日の少なさ、人間関係の摩擦、パワハラ・モラハラなどは、心の疲弊を引き起こす大きな要因です。
仕事への責任感が強い人ほど、自分を追い詰めやすく、我慢が続くと心が限界に達することもあります。
● 季節の変化(季節性うつ病)
特に冬季は日照時間の減少によりセロトニンの分泌が低下しやすく、
「冬になると毎年気分が落ち込む」「朝起きられなくなる」といった症状が出ることがあります。
この状態は「季節性情動障害(SAD)」とも呼ばれ、太陽光を浴びる・軽い運動をするなどの対策が有効です。
● ライフイベントの影響(転職・結婚・出産・離婚・死別など)
結婚や出産など喜ばしい出来事であっても、大きな環境変化はストレスの原因になることがあります。
新しい生活への適応、責任の増加、孤独感などが重なることで、心が疲れてしまうことは珍しくありません。
変化の大きい時期ほど、周囲の支えや「頼れる場所」を確保することが大切です。
うつ病は、決して心の弱さや甘えではなく、脳や体、生活環境が影響する“治療が必要な病気”です。
どんな原因であれ、苦しさを感じた時点で、十分にサポートを受ける理由があります。
うつ病の診断
「最近ずっと気分が沈んでいる」「何をしても楽しくない」──
そんな状態が続いていても、「これはうつ病なのだろうか?」と自分で判断するのは難しいものです。
うつ病の診断は、一時的な気分の変化と区別するために、明確な基準に基づいて行われます。
ここでは、医療現場で使用される代表的な診断基準をご紹介します。
診断は専門医が行います
うつ病は、医師(主に精神科医や心療内科医)が診察と問診を通じて診断します。
その際に用いられるのが、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)という国際的に認められた診断基準です。
アメリカ精神医学会が策定したもので、日本の精神医療でも広く活用されています。
DSM-5によるうつ病の診断基準(要点)
以下の9つの症状のうち、5つ以上が当てはまり、かつそのうちの1つは「気分の落ち込み」または「興味・喜びの喪失」であることが条件とされています。
また、それらの症状が2週間以上、ほぼ毎日続いていることが必要です。
1. 抑うつ気分
一日中気分が沈んでいる。涙もろくなったり、憂うつ感が続く。
2. 興味または喜びの喪失
以前楽しめていたことに興味がわかない、やる気が出ない。
3. 食欲の変化・体重の増減
食べられなくなる/逆に食べすぎてしまう、体重が著しく変動する。
4. 睡眠の変化
不眠(寝つけない/途中で目が覚める)または過眠(寝ても寝ても眠い)が続く。
5. 精神運動の焦燥または抑制
落ち着かずそわそわする/逆に動きや話し方が遅くなる。
6. 疲労感・エネルギーの低下
慢性的なだるさ、少しのことで疲れる、起き上がれない。
7. 自責感・無価値感
過剰な罪悪感、自分には価値がないと思う。
8. 集中力・思考力の低下
物事に集中できない、決断力が鈍る、会話が頭に入ってこない。
9. 死についての考え
「いなくなりたい」「死にたい」といった希死念慮、あるいは自傷行為の衝動。
診断にあたっての大切なポイント
- 一時的な気分の落ち込みではなく、「日常生活に支障をきたしているか」が判断のポイントになります。
- 自分では気づきにくい症状もあるため、家族や周囲の人の視点が参考にされることもあります。
- 自己判断は危険です。気になる症状が続く場合は、早めに専門医に相談しましょう。
うつ病の治療方法
1. 薬物療法
うつ病の原因のひとつに、セロトニンやノルアドレナリンといった脳内の神経伝達物質のバランス異常があります。
薬物療法はこのバランスを整え、気分の安定・意欲の回復・不安の軽減を目的に行います。
主な抗うつ薬の種類と特徴
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
セロトニンの再取り込みを阻害し、脳内の濃度を高めることで気分を安定させる薬です。比較的副作用が少なく、初めて抗うつ薬を使う患者さんにもよく処方されます。
対応疾患:うつ病・不安障害・強迫性障害など
主な副作用: 吐き気・下痢・性機能の低下・眠気(初期に出やすい)
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
セロトニンに加えて、意欲や集中力に関係するノルアドレナリンも増やす作用があります。特に、「気力が出ない」「集中力が続かない」といったうつ病に適しています。
主な副作用: 吐き気・不眠・血圧上昇・動悸
三環系抗うつ薬
古くから使われている抗うつ薬で、強い効果を持ちますが副作用が出やすい傾向があります。現在では、他の薬で改善が見られなかった場合や難治性のうつ病に用いられることが多いです。
主な副作用: 口渇・便秘・眠気・めまい・心拍数増加
非定型抗うつ薬(NaSSA、ドパミン系など)
従来型とは異なる作用を持つ薬で、患者の状態に合わせた柔軟な処方が可能です。眠気が強い人には眠気を抑える薬、食欲がない人には食欲を改善する薬など、個別の症状に合わせて選ばれます。
主な副作用: 眠気・体重増加・だるさ など(薬により異なります)
抗うつ薬の効果は2〜4週間ほどかけてゆっくり現れることが多いため、途中で自己判断せず、医師の指示に従って継続することが重要です。
2. 心理療法
薬だけでは改善が難しい部分や、ストレスに対する対処力を高めたい方には心理療法が有効です。
主な心理療法の種類
認知行動療法(CBT)
- 自分の「考え方(認知)」と「行動」のパターンに気づき、よりバランスの取れた思考へと修正していく療法です。
- たとえば、「失敗した=自分は無能だ」という極端な思考を、「失敗も経験の一部」と捉え直す練習を行います。
- 再発防止にも効果があるとされ、多くの医療機関で取り入れられています。
対人関係療法(IPT)
- うつ病が人間関係のストレスによって悪化している場合に有効です。
- 家族、職場、友人との関係を見直し、コミュニケーション方法を学んでいきます。
カウンセリング(支持的精神療法)
- 決まった技法ではなく、「安心できる対話の場」として活用されます。
- 自分の気持ちを整理したり、生活や治療の悩みを共有することで、感情の負担を軽減する効果があります。
3. 生活習慣の改善
治療と並行して、毎日の生活リズムを整えることは非常に重要です。
うつ病の回復を早め、再発を防ぐためにも、以下のような工夫をおすすめします。
睡眠を大切にする
- 眠りすぎ・寝不足の両方が、うつ症状を悪化させます。
- 毎日同じ時間に寝起きするリズムをつくることが、自律神経とホルモンバランスを整えるポイントです。
栄養バランスの良い食事を意識する
- セロトニンの材料となる**トリプトファン(大豆製品・乳製品・魚など)**を含む食材を積極的に摂りましょう。
- 食欲がないときは、少量でもよいのでエネルギーのある食品をこまめに補給することが大切です。
軽い運動を取り入れる
- ウォーキングやストレッチ、軽い筋トレなどが、セロトニンの分泌を促し、気分を安定させます。
- 無理にジムに通う必要はありません。「散歩するだけ」でも十分効果があります。
リラックスできる時間をつくる
- 入浴・音楽・読書・マインドフルネス・深呼吸など、自分に合ったリラックス法を見つけましょう。
- 「心が休まる時間」があることで、回復がスムーズになります。
まとめ
うつ病は適切な治療を受けることで回復が可能な病気です。無理をせず、焦らず、自分を責めないことが大切です。家族や友人、医療機関のサポートを受けながら、少しずつ回復を目指しましょう。
うつ病で休職を考えている方へ
毎日頑張りすぎていませんか?環境の変化や職場のストレスで心身が限界を感じているなら、無理をせず一度立ち止まることも大切です。うつ病は、無理を続けることで悪化し、長期の不調につながることもあります。
「心身ともに限界で、早急に休職したい…。」 「しっかり治して、また職場に戻りたい…。」
そんな思いを抱えている方が、安心して治療に専念できるよう、メンタルケア Lino clinic(リノクリニック)福岡天神院では、休職や復職のために必要な診断書を、最短即日で発行できる体制を整えております。少しでも早く、心と体を休められるよう、お気軽にご相談ください。※症状や診断の内容によっては、当日に診断書を発行できない場合があります。適切な診断を行うために、詳細な問診や追加の評価が必要になることがあるためです。あらかじめご了承ください。
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