不眠症の症状と原因|タイプ別の特徴と改善・治療法を解説

夜になっても眠れない、途中で何度も目が覚める、朝早くに目が覚めてしまう…。
こうした「眠れない悩み」は一時的な寝不足ではなく、慢性的に続くと「不眠症」と呼ばれ、日常生活に大きな影響を及ぼします。
不眠症には「寝つけない」「夜中に目が覚める」「早朝に目覚める」「ぐっすり眠れない」といったタイプがあり、原因も人によって異なります。この記事では、不眠症の症状・原因・改善策をタイプ別にわかりやすく解説していきます。
不眠症とは?

不眠症とは、眠るための環境が整っているにもかかわらず、うまく眠れない状態が続き、その結果として日中の生活に支障をきたす病気 のことです。
「昨日はちょっと眠れなかった」という一時的な寝不足や生活リズムの乱れとは異なり、不眠症は慢性的に症状が続くのが特徴です。数日だけの不眠は誰にでも起こることがありますが、1か月以上続き、仕事や学業、生活の質に影響するようであれば「不眠症」として医療的な対応が必要になります。
不眠症と一時的な不眠の違い
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一時的な不眠:生活習慣やストレス、環境の変化などで一時的に眠れない。数日から1週間程度で自然に回復することが多い。
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不眠症:原因が解消されないまま長期化し、日中の強い眠気、集中力の低下、気分の落ち込み、イライラなどの不調を伴う。
不眠症の4つのタイプ
医学的には、不眠症は次のようにタイプ別に分類されます。
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入眠困難:ベッドに入っても30分以上眠れない
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中途覚醒:夜中に何度も目が覚める
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早朝覚醒:予定より2時間以上早く目が覚めて眠れない
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熟眠障害:十分な睡眠時間をとっているのに熟睡感が得られない
これらの症状は単独で現れる場合もあれば、複数が重なることもあります。
不眠症が与える影響
不眠症は「夜眠れない」だけでなく、日中の生活全般に影響を及ぼす病気 です。眠気や集中力の低下により仕事や勉強の効率が落ちるほか、気分の落ち込みが続くことでうつ病や不安障害の引き金になることもあります。さらに、慢性的な睡眠不足は高血圧や糖尿病、動脈硬化など生活習慣病のリスクを高めることも知られています。
不眠症の主な症状

不眠症といっても症状の出方は人によって異なります。医学的には大きく4つのタイプに分類され、それぞれに特徴があります。
① 入眠困難(なかなか寝つけない)
ベッドに入っても30分〜1時間以上眠れず、「寝なければ」と焦るほどさらに眠れなくなるタイプです。眠りにつけないことで睡眠時間が短くなり、翌日の強い眠気や集中力低下につながります。
② 中途覚醒(夜中に何度も目が覚める)
眠りについても夜中に何度も目が覚めてしまい、再び眠るのが難しくなるタイプです。浅い眠りが続くため、ぐっすり眠れた感覚が得られず、翌朝の疲労感が強く残ります。
③ 早朝覚醒(朝早くに目が覚める)
予定よりも2時間以上早く目が覚め、その後眠れなくなる状態です。特に高齢者や気分の落ち込みが強い方に多く見られます。睡眠時間が十分にとれないため、日中の活動に影響しやすくなります。
④ 熟眠障害(ぐっすり眠れない)
眠っている時間は確保できているのに「眠った気がしない」「疲れが取れない」と感じるタイプです。睡眠の質が悪く、頭がすっきりせず倦怠感が続くのが特徴です。
このように、不眠症は単なる「眠れない」ではなく、寝つけない・途中で起きる・早く目が覚める・眠った気がしない といった複数の症状として現れます。人によっては複数のタイプが重なって出ることもあり、その場合さらに生活への影響が大きくなります。
不眠症のタイプ別の原因

不眠症の背景にはさまざまな要因があります。ここでは、症状のタイプごとに代表的な原因を整理してみましょう。
① 入眠困難(なかなか寝つけない)
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心理的要因:仕事や学校のストレス、不安や緊張、考えごとが頭から離れない
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生活習慣要因:寝る直前のスマホやパソコン使用、夜遅くのカフェインやアルコール摂取
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環境要因:明るすぎる照明、騒音、室温が高すぎる・低すぎる
特に「眠れないと困る」「早く寝なければ明日に響く」といった焦りやプレッシャーそのものが、かえって脳を興奮させてしまい、さらに寝つきを悪くする悪循環を招きやすいタイプです。
本来であれば眠ろうと力を抜くことで自然に眠りに入れますが、「眠れないことを意識する」こと自体が強い緊張となり、自律神経を乱し、余計に目がさえてしまいます。この状態が続くと、夜が近づくたびに不安を感じ、さらに眠れなくなるという悪循環が固定化されやすくなります。
② 中途覚醒(夜中に何度も目が覚める)
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身体的要因:頻尿、睡眠時無呼吸症候群、慢性的な痛みやかゆみ
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心理的要因:不安やストレスで眠りが浅くなる
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環境要因:夜中の物音や明かり、室温の変化
このタイプは加齢とともに増える傾向があります。年齢を重ねることで眠りが浅くなるのは自然な変化ですが、実際には睡眠時無呼吸症候群や前立腺肥大による頻尿、慢性の痛みなど病気が背景に隠れていることも少なくありません。そのため、単なる加齢現象と思い込まず、必要に応じて医療機関に相談することが大切です。
③ 早朝覚醒(朝早くに目が覚める)
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心理的要因:うつ病や抑うつ状態に伴いやすい
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身体的要因:加齢による体内時計の変化
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生活習慣要因:昼寝のしすぎや運動不足
予定より早く目覚めてしまうだけでなく、その後眠れないため慢性的な睡眠不足が積み重なり、日中の疲労感や集中力の低下につながります。特に「気分の落ち込み」や意欲の低下と併せて見られる場合は、うつ病など心の病気が背景にある可能性もあるため注意が必要です。
④ 熟眠障害(ぐっすり眠れない)
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身体的要因:睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害など、眠りの質を妨げる病気
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心理的要因:不安やストレスで眠りが浅くなる
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生活習慣要因:過度のアルコール摂取、夜型生活
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環境要因:寝具の不快感、室温や湿度が合わない
眠っている時間は十分でも「ぐっすり眠れた感じがしない」「疲れが残る」と感じる場合、睡眠の質そのものが低下しているサインです。浅い眠りが続いていたり、睡眠中に無呼吸や体の動きが多いなど、知らないうちに休養が妨げられている可能性があります。
不眠症の原因は複雑に絡み合う
不眠症は「心理的要因」「身体的要因」「生活習慣」「環境要因」が複雑に関わって起こります。タイプ別に原因を整理することは、改善策を考えるうえでとても大切です。
不眠症のセルフチェック

「最近眠れないけど、これって不眠症なのかな?」と迷う方のために、簡単なセルフチェックを紹介します。当てはまる項目が多いほど、不眠症の可能性が高くなります。
不眠症セルフチェック項目
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ベッドに入っても30分以上眠れないことが週3回以上ある
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夜中に何度も目が覚め、その後なかなか眠れない
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朝早く目覚めてしまい、二度寝ができない
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眠ったはずなのに「熟睡感」がなく、疲れが取れない
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日中に強い眠気を感じる
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集中力や記憶力が落ちて仕事や勉強に支障がある
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気分が落ち込みやすくなった、イライラしやすい
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「眠れないかも」と考えるだけで不安になる
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眠れないことが1か月以上続いている
判定の目安
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0〜2個:一時的な不眠の可能性が高く、生活習慣の工夫で改善できることもあります。
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3〜5個:不眠症の傾向があり、心身への負担が出始めているかもしれません。
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6個以上:不眠症の可能性が高く、早めに医療機関へ相談することをおすすめします。
セルフチェックの活用方法
このチェックはあくまで目安であり、診断を確定するものではありません。もし当てはまる項目が多く、生活や仕事に支障を感じているなら、心療内科や精神科、睡眠外来で専門的な評価を受けることが大切です。
不眠症の改善策

不眠症の改善には、まず 日常生活の工夫 が大切です。すぐに始められる具体的な方法を紹介します。
① 睡眠環境を整える
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光:寝室はなるべく暗くし、朝はカーテンを開けて自然光を浴びましょう。体内時計がリセットされ、夜に眠気が訪れやすくなります。
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温度・湿度:理想は室温18〜22℃、湿度50〜60%。エアコンや加湿器を上手に使って快適に。
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寝具:枕の高さは首と背中が自然にまっすぐになる程度。マットレスは硬すぎず柔らかすぎないものを選びましょう。
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音対策:どうしても物音が気になるときは耳栓を使用したり、川のせせらぎや扇風機の音など一定のリズム音(ホワイトノイズ)を流すと安心感が得られます。
② 生活習慣を見直す
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毎日同じ時間に寝起きする:休日もできるだけ同じ時間に起きると、体内時計が安定します。
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就寝前のスマホ・PCをやめる:ブルーライトが脳を覚醒させます。寝る1時間前から画面は見ないようにしましょう。
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カフェイン・アルコールを控える:カフェインは午後3時以降、アルコールは就寝3時間前から控えるのが目安です。
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昼寝は短く:するなら15〜20分以内にとどめ、午後3時以降は避けましょう。
③ リラクゼーション法
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入浴:就寝1〜2時間前に38〜40℃のぬるめのお湯に15分ほど浸かると、深部体温が下がって自然な眠気が出やすくなります。
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呼吸法:4秒で鼻から吸い、6秒かけて口から吐く腹式呼吸を数分行うとリラックスできます。
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ストレッチ:首や肩を回したり、軽く前屈するなどの簡単なストレッチも効果的。
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入眠儀式:毎晩決まった習慣を繰り返すと「これをしたら眠る時間」と脳が学習します。例:読書を5分、日記を書く、ハーブティーを飲む、静かな音楽を聴くなど。
④ 食事と栄養
眠りをサポートする栄養素を意識して取りましょう。
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マグネシウム(神経を落ち着かせる):アーモンド、ひじき、ほうれん草
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トリプトファン(睡眠ホルモンの材料):バナナ、豆腐、牛乳、チーズ
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ビタミンB6(トリプトファンを働かせる):鮭、鶏むね肉、にんにく
夕食は寝る3時間前までに済ませ、消化の良いものを選ぶとさらに快眠につながります。
医療機関での治療

生活習慣の改善で眠りの質が上がることもありますが、それでも改善が見られない場合には医療機関での治療が必要になります。不眠症は「がまんして乗り切る」ものではなく、治療によって改善できる病気です。
① 薬物療法
医師の判断で睡眠薬や抗不安薬などが処方されることがあります。
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睡眠薬(ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系など)
即効性があり、寝つきの改善や中途覚醒の予防に用いられます。種類や用量は症状に合わせて調整されます。 -
メラトニン受容体作動薬
体内時計を整え、自然に近い眠りを促す薬。高齢者にも比較的使いやすい。 -
抗うつ薬・抗不安薬
不眠の背景にうつ病や不安障害がある場合に処方されます。
※薬はあくまで補助的な手段であり、医師の指示に従って適切に使用することが大切です。
② 認知行動療法(CBT-I)
近年、不眠症に対して効果が科学的に証明されている治療法です。
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「眠れなかったらどうしよう」という不安な思考を修正する
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睡眠日誌をつけ、生活リズムを整える
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就床制限法(眠れない時間をベッドで過ごさない)などを行い、眠りやすい習慣を作る
薬に頼らずに不眠を改善できる方法として注目されています。
③ カウンセリング
公認心理師や臨床心理士によるカウンセリングでは、ストレスや不安の背景を整理し、気持ちの負担を軽減するサポートが受けられます。
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ストレスマネジメントの方法を学べる
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眠れないことに対する過剰な不安を和らげる
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一人で抱え込まずに安心できる場を持てる
④ 治療の組み合わせ
不眠症は人によって原因やタイプが異なるため、薬物療法・心理療法・生活習慣改善を組み合わせることが効果的です。医師と一緒に自分に合った治療法を見つけていくことが、改善への近道となります。
不眠症を放置するとどうなる?

「少しくらい眠れなくても大丈夫」と思って我慢している方は多いですが、不眠症を放置すると心身にさまざまな悪影響を及ぼします。
① 日中のパフォーマンス低下
眠気や集中力の低下により、仕事や勉強の効率が大きく落ちます。判断力や注意力も鈍くなり、ミスや事故のリスクが高まります。
② 精神的な不調の悪化
慢性的な不眠は、うつ病や不安障害などの発症リスクを高めます。
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「眠れない」という不安が強まり、さらに眠れなくなる悪循環
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気分の落ち込み、イライラ、意欲低下
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孤立感や自己否定感の増加
③ 身体的な健康への影響
不眠は自律神経やホルモンバランスを乱し、身体の健康にも直結します。
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高血圧や糖尿病など生活習慣病のリスク上昇
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免疫力の低下による感染症へのかかりやすさ
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動脈硬化など循環器疾患のリスク増加
④ 生活の質(QOL)の低下
眠れないことで趣味や人付き合いを避けるようになり、生活の楽しみが減っていきます。心身ともに疲れがたまり、社会生活や家庭生活に支障をきたすこともあります。
このように、不眠症は「一晩眠れなかった」だけの問題ではなく、放置することで心と体の両方に悪影響が広がる病気 です。早めに原因を見つけ、適切な対処を行うことが大切です。
まとめ
不眠症は「ただ眠れない」という一時的な問題ではなく、心と体に影響を及ぼす病気 です。
主な症状には「寝つけない(入眠困難)」「夜中に目が覚める(中途覚醒)」「朝早くに目覚める(早朝覚醒)」「ぐっすり眠れない(熟眠障害)」の4タイプがあり、人によって現れ方が異なります。
原因にはストレスや不安といった心理的要因だけでなく、生活習慣や環境、身体的な病気、加齢などさまざまな要素が関わります。そのため、改善のためには 睡眠環境の工夫・生活習慣の見直し・リラクゼーション・栄養バランス といったセルフケアに加え、医療機関での治療が必要になることもあります。
放置すると、うつ病や生活習慣病など二次的なリスクを高め、日常生活の質を大きく下げてしまいます。
「眠れないこと」が続いていると感じたら、我慢せずに早めに相談することが大切です。
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不眠症は「性格の問題」や「年齢のせい」と片づけてしまいがちですが、実際には治療や生活改善によって改善できる病気です。
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不眠症や睡眠の悩みは、誰にでも起こり得るものです。
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