うつ, 冬季うつ 2025/01/17

冬季うつとは?

寒くなると、気分が落ち込んだり、何をするにも意欲が湧かなくなったりすることはありませんか?
それは単なる「寒さによる気分の波」ではなく、冬季うつ(季節性情動障害/SAD)という心の病気かもしれません。
冬季うつは、日照時間の減少と密接に関係し、気分や生活に大きな影響を与える可能性があります。

【第一章】冬季うつの主な症状とサイン──見逃さないためのチェックポイント

冬季うつの代表的な症状とは?

冬になると気分が落ち込んだり、やる気が出なくなる…そんな変化を感じていませんか?
その症状、もしかしたら「冬季うつ(季節性情動障害)」かもしれません。

冬季うつの主な症状

これらの症状が毎年、冬になると繰り返される場合は、冬季うつの可能性が高いといえます。

放っておくとどうなる?

冬季うつの症状をそのままにしておくと、日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。

たとえば、こんな影響が出ることも

このように、気分の落ち込みが長く続くことで、悪循環に陥りやすくなるのが冬季うつの特徴です。

【第二章】なぜ冬にうつ状態になりやすいのか──冬季うつの3つの主な原因

1. 日照時間の減少が冬季うつに与える影響

冬になると日が短くなり、私たちが太陽の光を浴びる時間が極端に減ってしまいます
実はこの「日光」こそが、心の健康と深く関わっている要素なのです。

特に重要なのが、「セロトニン」という神経伝達物質。
これは、気分を安定させたり、幸福感をもたらしたりする働きを持っています。
日光を浴びることでセロトニンの分泌が促されるため、太陽の光が不足する冬場にはセロトニンの量が低下しやすくなります。

その結果、気分が沈んだり、イライラしたり、意欲が低下するなど、うつ症状が出やすくなるのです。

また、曇りが多い地域や、日中を屋内で過ごす時間が長い方ほど、この影響を受けやすいとされています。
だからこそ、意識的に日中に外に出る、朝カーテンを開けて日光を取り入れるなど、毎日のちょっとした工夫が大切です。

こうした行動は、セロトニンの分泌を助け、気分の安定につながることがわかっています。
つまり、冬の気分の変化には、「光の量」という環境要因が深く関係しているということなのです。

2. 体内時計(サーカディアンリズム)の乱れによる影響

私たちの身体には、「体内時計(サーカディアンリズム)」と呼ばれるリズムが備わっており、睡眠や覚醒、ホルモン分泌、体温調整などを24時間周期でコントロールしています。
このリズムの維持には、太陽光が大きな役割を果たしています。

朝に光を浴びることで体内時計がリセットされ、日中は活動的に、夜は自然な眠気が訪れるように働きかけるのです。
ところが、冬になると朝の光が弱く、日照時間も短いため、このリズムが乱れやすくなります。

結果として、「夜なかなか眠れない」「朝起きられない」「昼間もだるい」といった状態が起こりやすくなり、気分の安定にも支障をきたします。
特に在宅勤務や屋内中心の生活をしている人
ほど、外光の刺激が不足し、体内時計がズレやすい傾向にあります。

規則正しい生活リズムを心がけることはもちろん、朝にカーテンを開けて太陽光を浴びる、昼に少し外を歩くなど、意識的に自然光と接することが大切です。

3. メラトニンの過剰分泌と冬季うつの関係

メラトニンとは、脳の松果体という場所から分泌されるホルモンで、夜になると増加し、自然な眠気を促す働きを持っています。
日光を浴びることでこのメラトニンの分泌は一時的に抑えられ、活動的な日中を過ごす準備が整います

しかし、冬は朝から曇っていたり、日照時間そのものが短かったりするため、メラトニンが抑制されず、日中も高いレベルで分泌され続けてしまうことがあります。
これが、**「日中でも眠い」「常にだるい」「集中力が続かない」**といった冬特有の状態を引き起こします。

また、メラトニンが過剰に分泌されることで、日中のセロトニンの分泌も抑えられやすくなり、気分が不安定になりやすいという悪循環にもつながります。

朝起きたらすぐにカーテンを開けて光を取り込む朝食をしっかり摂って体内リズムを整えるなど、生活習慣の見直しがメラトニンバランスの正常化に役立ちます。

冬季うつについて相談してみる

【第三章】冬季うつと通常のうつ病の違い──見極めのポイント

冬季うつ(季節性情動障害)と、一般的なうつ病(非季節性うつ病)は、気分の落ち込みや意欲の低下といった基本的な症状が似ているため、混同されやすいのが現実です。
しかし、治療方針や予防策を考えるうえで、この2つの違いを正しく理解しておくことは非常に重要です。

● 最も大きな違いは「季節との関係」

比較項目 冬季うつ 通常のうつ病
発症のタイミング 主に秋から冬にかけて発症 季節に関係なく発症
改善の時期 春になると自然と改善する 改善に明確な季節的パターンはない
睡眠の傾向 過眠になりやすい 不眠が多く見られる
食欲の傾向 炭水化物や甘いものを多く摂る傾向 食欲不振が目立つ場合も多い
活動性 冬は低下、夏はエネルギッシュになる 年間を通じて変動が少ない場合も

● 冬季うつの特徴的なサイクル

冬季うつの症状は、毎年同じ時期に繰り返されるという特徴があります。特に以下のようなサイクルを感じている方は、冬季うつの可能性が高いと言えるでしょう。

こうした傾向に心当たりがある場合は、「季節性のリズムによって心身が大きく影響を受けている」というサインです。
これは一過性の気分の波ではなく、医療的にサポートを受けるべき症状である可能性が高いため、早めに心療内科や精神科への相談をおすすめします。

【第四章】自分でできる冬季うつの6つの対処法

【冬季うつのセルフケア①】光療法(ライトセラピー)

冬季うつの改善法として注目されているのが、光療法(ライトセラピー)です。
これは、人工的な強い光を浴びることで脳内のセロトニン分泌を促進し、気分の安定や睡眠リズムの正常化を図る治療法です。

使われるのは「ライトボックス」と呼ばれる専用の機器で、照度は10,000ルクス程度の強い白色光を発します。
朝起きてすぐの時間帯に、30分〜1時間ほど浴びることで、体内時計のリセットとセロトニンの活性化が期待できます。

テレビを見ながら、朝食をとりながらでも使用可能で、日常生活に無理なく取り入れられるのが魅力です。
ただし、目の病気がある方や特定の薬を服用中の方は医師に相談のうえ行うことが大切です。

【冬季うつのセルフケア②】日中の自然光を積極的に浴びる

冬でも、晴れている日は貴重な光のチャンスです。自然の太陽光は、人工照明とは異なる「生体リズムに直接働きかける力」を持っています。

おすすめは以下のような工夫:

このような日光浴は、セロトニンの生成を助けるだけでなく、夜間の良質な睡眠につながるメラトニン分泌にも良い影響を与えると言われています。

【冬季うつのセルフケア③】軽い運動やストレッチを習慣にする

運動は、うつ症状の軽減に科学的根拠がある対処法の一つです。
運動によって脳内のセロトニン、ドーパミン、エンドルフィンといった「幸せホルモン」が分泌され、気分が前向きになることが知られています。

おすすめの運動習慣:

激しい運動は必要ありません。「気持ちよく体を動かすこと」が大切です。
また、できれば日光の当たる時間帯に屋外で体を動かすことで、光の効果も同時に取り入れられます。

【冬季うつのセルフケア④】栄養バランスを整える食事

食事は心の健康に深く関わっています。冬季うつの予防には、脳をサポートする栄養素をしっかり摂ることがポイントです。

取り入れたい栄養素と食材

1. ビタミンD

✔ 含まれる食材:
鮭、サバ、イワシ、干ししいたけ、卵黄

 2. オメガ3脂肪酸

日常の食事で意識を

✔ 含まれる食材:
青魚(サバ・サンマ・マグロ)、えごま油、亜麻仁油、くるみ

3. マグネシウム

✔ 含まれる食材:
アーモンド、ひじき、納豆、豆腐、玄米、バナナ

これらの栄養素は、冬の心の不調にやさしく働きかけてくれる「天然のサポーター」です。
できることから、1つずつ取り入れてみましょう。

【冬季うつのセルフケア⑤】ストレスケアの時間を確保する

冬季うつの症状は、寒さや日照不足といった外的要因に加え、日常の精神的ストレスが重なることで悪化することがあります。
だからこそ、心の緊張をほぐす「ストレスケア」を、日常生活の中に意識的に取り入れることが大切です。

ストレスケアの実践例

大切なのは「何をするか」よりも、「自分が安心して過ごせる時間や空間をつくること」。
ストレスをゼロにすることはできませんが、自分なりの“心の逃げ場”を持っているだけで、冬季うつの症状が軽く済むケースも多いのです。

【冬季うつのセルフケア⑥】早めの専門相談で心と体を守る

冬季うつの症状が続く、あるいは年々悪化していると感じる場合には、一人で抱え込まず、心療内科や精神科に相談することがとても大切です。

なぜ専門医への相談が有効なのか?

相談のハードルを感じる方へ

「病院に行くのは大げさかもしれない」
「まだ我慢できるから大丈夫」
──そう思いながら無理を重ねる方ほど、春になっても回復が遅れ、うつ症状が長引くケースもあります。

【第五章】薬やカウンセリングも選択肢の一つ──焦らず、自分に合った方法を見つけよう

焦らず、あなたに合った治療方法を見つけましょう

冬季うつのつらさは、「気合い」や「気の持ちよう」で乗り越えられるものではありません。
心と体が本当に疲れているときは、適切な医療の力を借りることが回復への近道になります。

■ 薬を使うことは「甘え」ではありません

症状が強く、日常生活や仕事に支障が出ている場合には、抗うつ薬や睡眠改善の薬などを使うことがあります
これらの薬は、脳のバランスを整えて、気分の浮き沈みを安定させる働きがあります。

「薬に頼るのは不安…」「副作用が怖い」と感じる方も少なくありません。
でも実際には、医師と相談しながら量や種類を調整することができ、様子を見ながら進められるため、無理なく続けられるケースが多いです。

また、薬の効果が現れるまでには2週間〜1か月程度かかることもあるため、焦らず、ゆっくりと自分のペースで取り組むことが大切です。

■ カウンセリングで心の整理をする

「誰にも気持ちを話せず、一人で抱え込んでしまう」
そんな方にとって、カウンセリングは自分の心と向き合う大切な時間になります。

心理士や医師との対話を通して、

といったサポートを受けることができます。

話すことで「気づき」が生まれ、心がふっと軽くなる瞬間があるのも、カウンセリングの良さです。
「何を話せばいいのかわからない」という方でも、安心して相談できる環境が整っているのでご安心ください。

■ あなたに合った治療を、医師と一緒に見つけましょう

冬季うつの治療には、「これが正解!」という方法はありません。
薬を使う人もいれば、カウンセリング中心の人、生活習慣の見直しで改善する人もいます。
大切なのは、自分に合った方法を、無理なく続けていくことです。

心療内科や精神科では、あなたの状態を丁寧に聞き取りながら、
最も安心して取り組める治療法を一緒に考えていきます。

(出典:「うつ」に気づいたときの対処法は?

冬季うつで休職を考えている方へ

毎日頑張りすぎていませんか?環境の変化や職場のストレスで心身が限界を感じているなら、無理をせず一度立ち止まることも大切です。冬季うつは、無理を続けることで悪化し、長期の不調につながることもあります。

「心身ともに限界で、早急に休職したい…。」
「冬季うつをしっかり治して、また職場に戻りたい…。」

そんな思いを抱えている方が、安心して治療に専念できるよう、メンタルケア Lino clinic(リノクリニック)福岡天神院では、休職や復職のために必要な診断書を、最短即日で発行できる体制を整えております。少しでも早く、心と体を休められるよう、お気軽にご相談ください。※症状や診断の内容によっては、当日に診断書を発行できない場合があります。適切な診断を行うために、詳細な問診や追加の評価が必要になることがあるためです。あらかじめご了承ください。

Lino clinicでは

メンタルケア Lino clinic(リノクリニック)福岡天神院では、冬季うつをはじめとする心身の不調について、患者さま一人ひとりに寄り添った診療を行っています。当院は赤坂駅や天神駅から徒歩圏内に位置し、土日祝日も20時まで診療しているため、お忙しい方でも通いやすい環境です。当日予約にも対応しておりますので、気になる症状があれば、ぜひお気軽にご相談ください。

冬の時期を快適に過ごすために、まずは自分の心と身体を大切にすることから始めてみませんか?

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