双極性障害(躁うつ病)とは?
毎日の生活の中で、気分の浮き沈みを感じることは誰にでも起こりえることです。
しかし、その変動が極端で、生活に支障をきたすほど激しい場合は「双極性障害(躁うつ病)」の可能性があります。
双極性障害は、躁状態(気分が異常に高揚する状態)と、
うつ状態(気分が極端に落ち込む状態)を繰り返す精神疾患で、
適切な治療とサポートが必要です。
もし
「最近気分の変動が激しくてつらい…」
「うつの時期と元気すぎる時期を繰り返している…」
と感じている方がいたら、決して一人で抱え込まないでください。
双極性障害は、治療により症状をコントロールできる病気です。
今回は、双極性障害の特徴や原因、治療法について詳しく解説していきます。
双極性障害の基本的な特徴
双極性障害(躁うつ病)は、気分の極端な変動を特徴とする精神疾患です。
本人の意思とは関係なく、「躁状態」と「うつ状態」という正反対の気分が周期的に繰り返されるのが特徴です。
躁状態(ハイな気分)
以下のような「元気すぎる」状態が、数日から数週間続きます:
- 気分が異常に高揚し、活動的になる
普段よりもテンションが高く、話し方や行動が早くなることが多いです。 - 睡眠時間が短くても元気に動き回れる
3~4時間しか寝ていなくても、全く疲れを感じずに動ける状態が続きます。 - 自信過剰になり、無謀な行動をとることがある
「自分は何でもできる」と感じて、根拠のない自信を持ちすぎてしまうことがあります。 - お金を浪費したり、突発的な行動が増える
高額な買い物や、急な旅行・仕事の辞職など、日常では考えにくい行動をとってしまう場合があります。
一見「調子がいい」ように見えても、周囲とのトラブルや本人の生活に悪影響を及ぼすことが多く、治療が必要な状態です。
うつ状態(気分の落ち込み)
躁状態とは反対に、以下のような強い落ち込みが現れます:
- 強い憂うつ感や無気力を感じる
何をするにも気力がわかず、布団から出られないような状態が続くこともあります。 - 何をしても楽しくない、興味が持てない
以前は好きだった趣味や人付き合いにも興味が持てなくなり、感情が乏しくなる傾向があります。 - 集中力が低下し、仕事や日常生活が困難になる
ミスが増えたり、話の内容が頭に入らなくなるなど、思考力・判断力が落ちてしまいます。 - 睡眠障害(過眠または不眠)、食欲の変化
寝すぎてしまう、眠れなくなる、食べすぎ・食欲不振といった変化が現れやすくなります。
この2つの状態が周期的に繰り返されるのが双極性障害
- 気分が高揚してエネルギーがあふれる「躁状態」と、
- 気分が落ち込み何も手につかない「うつ状態」
これらの波が数週間から数か月単位で入れ替わるのが、双極性障害の大きな特徴です。
一見すると「元気なとき」と「疲れているとき」があるように見えるため、周囲にも本人にも気づかれにくいことがあります。
双極性障害の2つのタイプ
双極性障害は、症状の現れ方によって「双極Ⅰ型障害」と「双極Ⅱ型障害」の2つに分けられます。
それぞれのタイプには特徴的な違いがあり、治療方針やサポートの方法も異なるため、正確な診断がとても重要です。
① 双極Ⅰ型障害
躁状態が非常に激しく、日常生活や社会生活に深刻な影響を及ぼすタイプです。
- 躁状態では、異常なほど気分が高揚し、自信過剰や過活動が顕著に現れます。
- 睡眠時間がほとんどなくても疲れを感じず、延々と話し続けたり、止まらない行動を繰り返したりします。
- 金銭感覚の麻痺(衝動買い・浪費)や性的逸脱行動、攻撃的な言動などが見られ、人間関係や社会的信用に大きなダメージを与えることもあります。
- 症状が悪化すると、現実感を失い幻覚や妄想が現れる「躁病性精神病」に至るケースもあります。
特に、躁状態のピーク時には自傷行為や事故のリスクも高まるため、専門的な管理が必要です。
そのため、重度の躁状態にある場合には、医師の判断で入院治療が選択されることもあります。
② 双極Ⅱ型障害
軽躁状態とうつ状態を繰り返すタイプで、Ⅰ型に比べて躁の程度は穏やかですが、うつ状態が深く長引く傾向があります。
- 軽躁状態では、元気になったり社交的になったりするものの、明らかな問題行動には至らないケースが多いです。
- 一見「調子がいい」「働きすぎかな」と思われることもあり、周囲からも見逃されやすい特徴があります。
しかし、その後に続くうつ状態は深刻で、以下のような問題が起こることがあります。
- 無気力感や強い自己否定感が長期間続く
- 過眠や食欲不振などの身体症状が強く出る
- 「死にたい」と感じるほどの抑うつが生じることもあり、自殺リスクが高まるケースも
双極Ⅱ型は、うつ症状が中心であるため、うつ病と誤診されることも少なくありません。
その結果、適切な治療が遅れ、症状が慢性化するリスクもあります。
そのため、軽躁状態のエピソードを見逃さず、症状の経過を丁寧に伝えることが診断のカギとなります。
タイプにかかわらず大切なこと
双極性障害はいずれのタイプであっても、気分の波を自分の意思でコントロールするのが難しい病気です。
しかし、適切な診断と治療、周囲の理解と支えがあれば、症状をコントロールしながら安定した生活を送ることができます。
自身の気分の変化に気づいたら、早めに心療内科や精神科へ相談することをおすすめします。
双極性障害の原因
双極性障害は、誰にでも起こり得る可能性のある精神疾患ですが、現在の医学ではその明確な発症原因はまだ完全には解明されていません。
しかし、多くの研究から、複数の要因が複雑に関係していることが分かっています。ここでは、主に関与しているとされる3つの要素をご紹介します。
① 遺伝的要因(家族内発症の傾向)
双極性障害は、同じ家族の中で発症するケースが比較的多いことが知られており、遺伝的な要素が関係していると考えられています。
- 両親や兄弟姉妹に双極性障害の既往がある場合、一般的な人よりも発症リスクが高くなる傾向があります。
- 特に、一卵性双生児の研究においては、一方が発症すると他方も発症する確率が高いことが示されており、遺伝との関連性が注目されています。
ただし、重要なのは、遺伝要因だけで発症が決まるわけではないということです。
実際には、遺伝的な体質に加えて、その人の環境やストレス状況が合わさることで発症リスクが高まると考えられています。
② 脳内の神経伝達物質の異常
双極性障害は、脳内の神経伝達物質(神経細胞同士の情報をやりとりする化学物質)のバランスが乱れることと強く関係していると考えられています。
特に注目されているのは、次の3つの物質です:
- セロトニン: 気分や感情の安定に関わる
- ドーパミン: 快楽・意欲・報酬系の調整に関わる
- ノルアドレナリン: ストレス反応や警戒心の調整に関わる
これらの物質が過剰または不足している状態になると、気分の高揚(躁状態)や落ち込み(うつ状態)といった症状が生じやすくなります。
そのため、治療においては、これらの神経伝達物質のバランスを整える薬が使用されることが多いです。
③ 環境要因・ストレス(生活背景の影響)
双極性障害は、生活の中でのストレスや環境の変化が発症や再発の引き金になることが多いとされています。
以下のような体験が、脳や心に強い負荷をかけ、潜在的なリスクを持っていた人に発症を引き起こすことがあります。
- 家庭や職場での強いストレス(プレッシャー、過労など)
- トラウマ体験(事故・暴力・虐待など)
- 大きな生活の変化(転職、引っ越し、出産、離婚、受験など)
- 人間関係のトラブル(孤立、いじめ、親密な関係の断絶など)
また、ストレスがなくなった後に発症する「反動」のようなケースもあるため、単純に「原因を取り除けば治る」というわけではありません。
むしろ、ストレスの捉え方や対応力、サポート体制の有無が大きく影響すると考えられています。
原因は「ひとつだけ」ではありません
双極性障害は、体質(遺伝)・脳の状態・環境的なきっかけなどが重なり合って発症する病気です。
「これが原因」と特定することは難しいですが、原因を理解することは、再発予防や周囲の理解にもつながります。
自分を責めたり、過去の出来事を後悔したりする必要はありません。
症状に合わせて、安心できるサポートや治療を見つけていくことが、回復への一歩になります。
双極性障害の診断
双極性障害は、うつ状態と躁(または軽躁)状態を繰り返すことが特徴ですが、その症状は他の精神疾患と似ている部分も多く、正確な診断には専門的な判断が必要です。
特に重要なのが、精神科医による丁寧な問診(診察)です。ここでは、診断の流れと注意点について詳しく解説します。
1. 問診と症状のヒアリングが中心
診断では、まず医師が患者本人の現在の症状だけでなく、過去の気分の変化や行動の特徴を丁寧に聞き取ります。
- これまでに気分が高揚しすぎた経験(躁または軽躁状態)がなかったか
- 落ち込みのエピソード(うつ状態)がどれくらいの頻度・期間で続いているか
- 睡眠、食欲、行動パターン、人間関係への影響なども詳しく確認されます
双極性障害は、うつ状態が先に現れることが多く、最初はうつ病と診断されるケースも珍しくありません。
そのため、過去に「数日間ほとんど寝なくても元気に動き続けたことがある」「妙に自信過剰になって普段しない行動をとった」などのエピソードが過去にあったかを思い出すことが重要です。
本人は「少し調子が良かっただけ」と感じていても、それが軽躁状態や躁状態のサインであることがあります。
2. 双極性障害と他の疾患との鑑別(見分け)が必要
双極性障害は、以下のような他の精神疾患と症状が似ているため、慎重な見極めが求められます。
- うつ病(大うつ病性障害)
- 不安障害・パニック障害
- 発達障害(ADHDなど)
- パーソナリティ障害
これらとの違いを明確にするために、医師は長期的な症状の経過や、周囲の情報(家族や支援者の話)も参考にします。
必要に応じて、心理検査やスクリーニングツールを用いることもあります。
3. 診断には「時間」が必要なことも
双極性障害の診断は、一度の受診だけでは判断が難しいこともあります。
とくに軽躁状態は「本人が異常と感じない」ことが多く、医師に正しく伝わらないことがあるため、数回の診察や経過観察が必要になる場合もあります。
また、気分の波が年に数回しか起こらないケースもあり、その場合は診断確定までにある程度の時間をかけて慎重に見ていくことが大切です。
双極性障害の治療法
双極性障害は、適切な治療を受けることで、気分の波を安定させ、日常生活を安心して送ることが可能な病気です。
治療は、主に「薬物療法」「心理療法」「生活習慣の改善」の3つを組み合わせて行います。
1. 薬物療法(もっとも中心となる治療)
■ 気分安定薬(リチウムなど)
- 気分の波を抑える働きがあり、躁状態・うつ状態の両方に有効です。
- 双極性障害の第一選択薬として広く使われており、再発予防にも効果が期待できます。
- 一定の効果を保つには血中濃度の管理が必要なため、定期的な採血や診察を受けることが大切です。
- 主な薬:リチウム、ラモトリギン、バルプロ酸など
■ 抗精神病薬(躁状態に対応)
- 強い興奮や衝動性、妄想的な思考を抑えるために使用されます。
- 特に躁状態が激しい場合や、入院治療が必要なケースで用いられることが多いです。
- 一部の抗精神病薬は、うつ状態にも効果があるとされ、補助的に処方されることもあります。
- 副作用(眠気、体重増加、筋肉のこわばりなど)が出ることがあるため、医師の管理下で慎重に使用します。
■ 抗うつ薬(うつ状態に対応)
- うつ状態を改善するために処方されますが、躁状態へ移行する「躁転」のリスクがあります。
- そのため、抗うつ薬は単独では使われず、必ず気分安定薬と併用されるのが原則です。
- 効果や副作用の出方には個人差があるため、少量から始めて慎重に調整していきます。
2. 心理療法(気分の波を予防・緩和するためのサポート)
■ 認知行動療法(CBT)
- 思考のクセや偏りに気づき、気分の浮き沈みに左右されない考え方を育てます。
- また、ストレスに対処する技術や、再発を防ぐための行動パターンを学びます。
■ 対人関係療法
- 人間関係のストレスがきっかけとなって症状が悪化する方に有効です。
- 周囲との付き合い方を見直し、安定した生活リズムを築くための関係性を整えていきます。
心理療法は、薬では補えない「心の整え方」を学ぶ重要な治療の柱です。
医師や臨床心理士とともに、安心できるペースで進めていくことが大切です。
3. 生活習慣の改善(日々の安定のためにできること)
双極性障害の再発を防ぐためには、生活リズムを整えることが非常に重要です。
- 規則正しい生活を意識する(毎日同じ時間に寝起きするなど)
- 睡眠の質と量を安定させる(寝すぎも寝不足も避ける)
- 適度な運動を継続する(ウォーキングやストレッチなど軽いものでOK)
- 過度なストレスを避け、自分に合ったリラックス法を見つける(趣味・音楽・入浴など)
生活習慣の安定は、薬や心理療法の効果を高め、再発の予防にもつながる大切な土台となります。
(出典:すまいるナビゲーター 双極性障害とは – 原因、症状、治療方法などの解説)
まとめ
双極性障害(躁うつ病)は、気分が極端に高揚した躁状態と、極端に落ち込んだうつ状態を繰り返す精神的な障害です。躁状態ではエネルギーが過剰になり、判断力が低下して無謀な行動をとることがあります。反対に、うつ状態では深い悲しみや無気力、社会的な孤立感が強くなります。早期の診断と適切な治療が重要で、薬物療法や精神療法を組み合わせることで、症状を管理し、生活の質を改善することが可能です。定期的な医師のサポートを受けながら、症状の波を乗り越えていくことが大切です。
双極性障害(躁うつ病)で休職を考えている方へ
毎日頑張りすぎていませんか?環境の変化や職場のストレスで心身が限界を感じているなら、無理をせず一度立ち止まることも大切です。双極性障害(躁うつ病)は、無理を続けることで悪化し、長期の不調につながることもあります。
「心身ともに限界で、早急に休職したい…。」
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