心療内科 2025/01/17

心療内科と精神科の違いとは?

日常生活の中で、仕事や人間関係のプレッシャー、生活環境の変化などによって、ストレスや不安を抱える人は少なくありません。

休息や趣味で解消できる場合もありますが、ときにはそのまま放置すると、気分の落ち込みや身体の不調が長引いてしまうこともあります。そんなとき「心療内科や精神科に相談したほうがいいのだろうか?」と迷う方も多いのではないでしょうか。

しかし現実には、「心療内科と精神科の違いがよく分からない」という理由で、受診をためらってしまう方が少なくありません。

「どちらを選べばいいのか分からない」「そもそも自分の症状は、病院で診てもらえるものなのか?」このような疑問や不安を抱える方のために、この記事では、心療内科と精神科の違いや、それぞれの診療科の特徴・役割について、できるだけ分かりやすく解説していきます。

心療内科と精神科の診療内容の違い

心療内科と精神科は、いずれも「心が原因で起こる不調」を扱う医療機関ですが、診療の対象やアプローチには明確な違いがあります。

心療内科は、ストレスや心理的な要因によって引き起こされる身体の不調(いわゆる心身症)が対象です。例えば、緊張や不安から来る腹痛や頭痛、吐き気、動悸、下痢、自律神経失調症、さらには喘息や心筋梗塞といった内科的疾患にも、心理的ストレスが関与している場合には、心療内科で診ることがあります。

一方で、精神科は、「心の病気」そのものを診療の対象とする診療科です。代表的な症状としては、うつ病や不安障害、不眠症、イライラ、パニック発作、さらには幻覚・幻聴・妄想などが含まれます。またアルコール依存症や薬物依存症といった依存症も、精神科で対応可能です。

このように、症状が体に現れているか、心に現れているかによって、受診すべき診療科が異なります。診療のアプローチや治療方法も、それぞれの特性に応じた内容となっています。

心療内科と精神科の違いを、以下に簡潔にまとめました。

項目 心療内科 精神科
主な対象 心身症(体に現れる心の問題) 精神疾患(心そのものの問題)
症状の特徴 身体症状が中心 精神症状が中心
診療のアプローチ 身体と心の両面を統合的に診る 心理的・精神的な問題に直接対応
治療方法 心理療法や薬物療法、生活指導 薬物療法が中心

次からは、それぞれの診療科について、さらに詳しく見ていきましょう。

心療内科とは?

心療内科は、心の問題が体の症状として現れる「心身症」を主に診療する科です。心と体が深く関わり合うことで起こる不調に対応し、患者さんの生活の質を向上させることを目指します。具体的には、以下のような症状が主な対象となります。

例えば、強いストレスや不安を感じたときに現れる胃痛や胸やけなどの消化器症状や、緊張が続くことで起こる動悸や息苦しさなどです。また、慢性的なストレスが原因となる頭痛やめまい、さらには心身の疲労が蓄積することで感じる慢性的な疲労感などがあります。

これらの症状は、身体の異常として現れながらも、原因が心の問題にある場合も少なくありません。心療内科では、こうした心と体のつながりに着目し、適切な治療を行います。

もし原因がはっきりしない体の不調が続いている場合は、一度心療内科に相談するのがおすすめです。

心療内科を受診する方の症状の例

心療内科でよく見られる症状の一例です。

これらの症状は、身体の検査では異常が見つからないことが多く、自律神経の乱れやストレス反応が背景にあるケースが少なくありません。また複数の症状が同時に現れることも多く、「なんとなく調子が悪い」といったあいまいな不調が続くのも特徴です。

心療内科では、患者さんの体の状態だけでなく、心理的背景・生活環境・職場や家庭でのストレス要因なども丁寧に聞き取り、包括的なアプローチを行います。

気になる症状について相談してみる

精神科とは?

精神科(精神神経科)は、心の症状や精神的な病気そのものを専門に診療する科です。さまざまな精神疾患に対応し、患者さんの社会生活や日常生活の安定を支えることを目的としています。

具体的には、気分の落ち込みやイライラ、不安感、眠れないといった感情の不調、あるいは幻覚や幻聴、妄想などの精神症状、さらに、物忘れや強いこだわり、極端な不安や行動の反復など、認知や行動に関する問題などです。

対象となる代表的な疾患には、うつ病や双極性障害(躁うつ病)、統合失調症、不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、強迫性障害などがあり、症状の幅が広く、個別の治療が必要とされます。

精神科では、こうした不調に着目し、薬物療法や精神療法を組み合わせて適切な治療を行います。

もし、人との関わりに支障があるような精神的な症状が続いている場合は、一度精神科に相談してみるのがおすすめです。

精神科を受診する方の症状の例

精神科でよく見られる症状の一例です。

これらの症状は一例であり、症状の程度や種類は人によってさまざまです。またうつ病や双極性障害、不安障害、パニック障害、強迫性障害、統合失調症などの精神疾患が背景にある可能性があります。

精神科では、こうした精神症状に対し、診察や診断、治療を通じて、患者さんが少しでも日常生活を快適に送れるようサポートします。些細なことでも心の不調があれば、精神科に相談してみるのが望ましいでしょう。専門家による早期の診断と治療が、心の健康回復への第一歩です。

心療内科と精神科の治療内容の違い

心療内科と精神科では、どちらも心の不調を扱いますが、治療のアプローチには違いがあります。心療内科は心因性の身体症状に、精神科は心の病気そのものに焦点を当てた治療を行います。それぞれの主な治療内容について、具体的に見ていきましょう。

心療内科での治療内容

心療内科では、ストレスや心理的な要因によって身体に不調が現れる「心身症」に対して、心と体の両面からアプローチする治療が行われます。症状の背景には、家庭や職場のストレス、人間関係などが関係していることも多いため、治療では身体症状だけでなく生活環境や心理的要因も丁寧に見極める姿勢が特徴です。

心療内科で行われる主な治療内容を紹介します。

1. 薬物療法(抗不安薬・抗うつ薬など)

症状が強く、日常生活に支障を来している場合には、必要に応じて薬物療法が用いられます。

薬の使用に不安を感じる方も少なくありませんが、多くの医療機関では、副作用に配慮しつつ、最小限の量からスタートし、医師と相談しながら段階的に調整していくことが可能です。

2. 心理療法(カウンセリング・認知行動療法など)

薬物だけでなく、心理的な側面に対するアプローチも重要です。中でも、以下のような心理療法が代表的です。

これらの心理療法は、一時的な症状の緩和だけでなく、再発防止にもつながるため、長期的な心の健康を支える重要な治療手段といえます。

3. 生活指導(セルフケアのサポート)

心と体のバランスを整えるには、生活習慣の見直しも欠かせません。心療内科では、以下のようなセルフケアを支援する生活指導も行われます。

これらの指導を通じて、薬に頼り過ぎることなく、自分自身の力で体調を整えていけるようサポートが行われます。

心療内科の治療は、症状だけでなく、生活背景や患者さんの希望も含めて個別に組み立てられるのが特徴です。「薬をできるだけ少なくしたい」といった気持ちも丁寧にくみ取られます。

「なんとなく不調が続いてつらい」と感じたら、無理をせず、まずは心療内科に相談してみることが大切です。心と体の両面から、回復への道を探っていきましょう。

精神科での治療内容

精神科では、うつ病や統合失調症、不安障害、双極性障害、パニック障害など心の病気そのものを対象とした治療が行われます。以下に、精神科で行われる代表的な治療内容をご紹介します。

1. 薬物療法(抗うつ薬・抗精神病薬・気分安定薬など)

多くの精神疾患では、薬物による調整が治療の中心となります。

薬の種類や量は、症状の重さや副作用への反応を見ながら医師が慎重に調整します。副作用への懸念がある方も、主治医とよく相談しながら、無理のない範囲で治療を進めることが大切です。

2. 心理療法(認知行動療法・精神療法など)

精神科では、薬物療法と併用して心理的な側面へのアプローチも行われます。症状の背景にある思考パターンや感情の特性、人間関係の悩みなどに働きかけることで、再発を予防する治療方法です。

他にも、状態や希望に応じてさまざまな療法が選択されます。

3. 入院治療(安全で集中的なサポート)

症状が重篤で、自宅での生活が困難な場合や、自傷のリスクが高い場合には、入院治療が選択されます。入院中は以下のような体制で治療が行われます。

入院は、心を落ち着ける安全な空間として活用する選択肢の一つです。

精神科では、患者さんの状況や希望に応じた柔軟な対応が可能です

精神科の治療では、患者さんの症状、背景、価値観に応じて、治療方法や進め方をきめ細かく調整していきます。患者さんの要望にも応じながら、個別性の高い治療が実現されるのが精神科の特徴です。

心の不調を感じたら「大丈夫」と我慢するのではなく、専門家の力を借りて少しずつ前に進んでみましょう。

自分に合った診療科の選び方

「この不調、心が原因のような気がするけれど、心療内科と精神科のどちらを受診すればいいのか分からない……」のように迷う方は少なくありません。両者は似た印象を持たれがちですが、実際には診療のアプローチや対象が異なります。

ここでは、自分の症状に合った診療科の選び方を、3つの視点から分かりやすく解説します。

1.身体に出る不調が主な場合

以下のような体の不調が続いている方は、心療内科の受診が適しています。

これらの症状に検査では異常が見つからず「ストレスが原因かも」と言われたことがある方や「体の調子が悪いけれど原因がよく分からない」と感じている方は、心と体を総合的に診る心療内科へ相談すると良いでしょう。

2.心の症状・感情の変化が強い場合

次のような気分や思考の変化が目立つ場合は、精神科の受診が適切です。

これらの症状は、うつ病や不安障害、統合失調症などの可能性もあります。特に、日常生活に支障が出ている場合は早めの受診が重要です。

3.どちらを選べばよいか分からないときは

「身体も心も不調がある」「どちらの症状が強いのか判断できない」など分からない場合は、心療内科と精神科の両方を掲げているクリニックを選ぶと良いでしょう。どちらであっても、その人に合った治療方針を提案してくれたり、必要があれば適切な診療科を紹介してもらえたりします。状況に応じて柔軟に対応してもらえるため、まずは一歩を踏み出してみましょう。

 

迷ったときは、お気軽にまずは相談を

初めて受診する場合は、事前にクリニックの公式サイトを確認するのも有効です。「どんな診療科があるのか」「どういった症状に対応しているのか」などをチェックし、電話やメールで相談できる窓口があるかも確認しましょう。

また最近では女性医師在籍・完全予約制・土日診療可など、患者さんのニーズに合わせた心療内科・精神科クリニックも増えています。「自分らしく、安心して通える場所」を探すことも、治療の第一歩です。

まとめ

心療内科と精神科の違いを理解することで、自分に適した科を選びやすくなります。大切なのは、どちらの科でも、心身の健康をサポートしてくれる場所だということです。気になる症状がある場合は、早めに相談することをおすすめします。
つらい、苦しい、しんどいと感じる症状や悩みは、人それぞれです。決して我慢せずに、ぜひ気軽に専門の医師に相談してください。
心の不調や症状を明確にすることで、適切な治療や対策が見つかり、心身の健康を保つことができます。一人で抱え込まず、まずは気軽に専門家に相談してみましょう。

メンタルケア Lino clinic(リノクリニック)福岡天神院では、心や身体の不調や悩みに寄り添い、丁寧な診察とサポートを行っています。当日予約も可能で、土日祝日も20時まで診療しておりますので、お忙しい方でも通いやすい環境です。心配なことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

気になる症状について相談してみる

ご相談・お問い合わせ

診療内容についてのご相談は、お問い合わせフォームよりご連絡下さいませ。
診療予約はお電話またはWEB予約にて承っております。

ご相談・お問い合わせはこちら