心療内科と精神科の違いとは?
日常生活の中で、仕事や人間関係のプレッシャー、生活環境の変化などによって、ストレスや不安を抱える人は少なくありません。
休息や趣味で解消できる場合もありますが、ときにはそのまま放置すると、気分の落ち込みや身体の不調が長引いてしまうこともあります。
そんなとき、
「心療内科や精神科に相談したほうがいいのだろうか?」
と迷う方も多いのではないでしょうか。
しかし現実には、
「心療内科と精神科の違いがよく分からない」
という理由で、受診をためらってしまう方が少なくありません。
- 「どちらを選べばいいのか分からない」
- 「そもそも自分の症状は、病院で診てもらえるものなのか?」
そんな疑問や不安を抱える方のために、この記事では、心療内科と精神科の違いや、それぞれの診療科の特徴・役割について、できるだけ分かりやすく解説していきます。
心療内科とは?
心療内科は、心の問題が体の症状として現れる「心身症」を主に診療する科です。
心と体が深く関わり合うことで起こる不調に対応し、患者さんの生活の質を向上させることを目指します。
具体的には、以下のような症状が主な対象となります。
たとえば、強いストレスや不安を感じたときに現れる胃痛や胸焼けなどの消化器症状や、
緊張が続くことで起こる動悸や息苦しさ。また、慢性的なストレスが原因となる頭痛やめまい、さらには心身の疲労が蓄積することで感じる慢性的な疲労感などがあります。
これらの症状は、身体の異常として現れながらも、原因が心の問題にある場合が多いとされています。
心療内科では、こうした心と体のつながりに着目し、適切な治療を行います。
もし原因がはっきりしない体の不調が続いている場合は、一度心療内科に相談するのがおすすめです。
(出典:厚生労働省 心療内科)
心療内科を受診する方の症状の例
- 人間関係の悩みが原因で、長期間気分が沈んでいる
- めまいや耳鳴り、立ちくらみがあり、検査では異常が見つからない
- 朝、会社に行こうとするとお腹を壊してしまう
- 意欲が湧かず、何をするにもやる気が出ない
- 胸が締め付けられるような感覚やザワザワ感がある
- 息苦しさや喉の詰まりを感じることがある
- 胃の不調が続き、胸焼けや食欲不振がある
- どれだけ寝ても起きたときに疲れが取れない
- 肩こりや腰痛が慢性的に続き、治らない
- 手足がだるく感じたり、しびれたりする
これらの症状は、ストレスや心理的な要因が関与している場合が多いです。心療内科では、患者さんの体の状態だけでなく、心理的な背景や生活環境を含めた包括的なアプローチを行います。
心療内科での治療内容
心療内科では、心の不調が体に表れている状態(心身症)に対して、心と体の両面からアプローチする治療が行われます。
以下は、主な治療内容とその特徴です。
1. 薬物療法(抗不安薬・抗うつ薬など)
心の不調が強く、日常生活に支障が出ている場合は、薬を使って症状を和らげることがあります。
- 抗不安薬: 緊張感や不安感、焦りなどをやわらげ、心を落ち着かせます
- 抗うつ薬: 気分の落ち込みや意欲の低下を改善し、安定した状態を目指します
- 睡眠薬: 眠れない日が続く場合に、睡眠のリズムを整えるために使用します
薬の使用に不安がある方も多いですが、医師と相談しながら最小限の量からスタートすることも可能です。副作用や効果の出方には個人差があるため、こまめな調整を行いながら進めます。
2. 心理療法(カウンセリング・認知行動療法など)
薬だけでなく、心のクセや考え方のパターンに働きかける治療も重要です。
代表的なのは以下のような方法です。
- カウンセリング: 専門家と会話を重ねることで、自分の考えや感情を整理し、問題の背景に気づくサポートをします
- 認知行動療法(CBT): 「物事の受け取り方」や「行動のパターン」を見直し、ストレスの感じ方を柔らかくする方法です
これらの療法は、根本的なストレスへの対処力を高め、再発予防にもつながります。
3. 生活指導(セルフケアのサポート)
心療内科では、日々の生活習慣の見直しも重視されます。
特に以下の3つは、心の健康を保つうえで大切なポイントです。
- 食事: 栄養バランスの整った食生活を提案し、心身の安定をサポート
- 睡眠: 睡眠の質とリズムを改善するための生活リズムの調整
- 運動: 軽いウォーキングやストレッチなど、継続できる運動の習慣化を支援
これらの指導を通じて、薬に頼りすぎず、自分自身で心身の状態を整えていく力を身につけられるように支援します。
心療内科では、症状やライフスタイルに合わせて個別に治療プランを立てます。
「薬は少なめにしたい」「まずは話を聞いてほしい」といった希望も、丁寧にくみ取ってくれるのが特徴です。
「このまま不調が続くのはつらい」と感じているなら、まずは一度、医師に相談してみることが大切です。
専門的なアドバイスを受けることで、心と体の両方から回復への道を歩むことができます。
精神科とは?
精神科(精神神経科)は、心の症状や精神的な病気そのものを専門に診療する科です。
脳の機能や神経伝達の不調によって起こるさまざまな精神疾患に対応し、患者さんの社会生活や日常生活の安定を支えることを目的としています。
具体的には、以下のような疾患や症状が主な対象となります。
たとえば、気分の落ち込みやイライラ、不安感、眠れないといった感情の不調、
あるいは幻覚や幻聴、妄想、思考の混乱などの精神症状、
さらに、物忘れや強いこだわり、極端な不安や行動の反復など、認知や行動に関する問題も含まれます。
対象となる代表的な疾患には、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症、不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、強迫性障害などがあり、症状の幅が広く、個別の治療が必要とされます。
精神科では、こうした脳と心の働きの不調に着目し、薬物療法や精神療法を組み合わせて適切な治療を行います。
もし、気分の波や思考の混乱、人との関わりに支障があるような精神的な症状が続いている場合は、
一度精神科に相談してみることをおすすめします。
精神科を受診する方の症状の例
- 周りの人が自分の悪口を言っているように感じる
- 疲れているのに夜眠れず、不眠が続く
- 誰かに監視されている気がする
- 小さなことに執着し、何度も確認してしまう
- ドキドキして不安で仕方がない
- 集中力が続かず、注意が散漫になりがち
- 食欲がなく、何を食べても美味しく感じられない
- 食べすぎてしまい、コントロールが難しい
- 人前で過度に緊張して話せない
- 朝は気分が沈み、夕方になると少し楽になる
これらの症状は一例です。些細なことでも心の不調があれば、精神科に相談してみるのが望ましいでしょう。専門家による早期の診断と治療が、心の健康回復への第一歩です。
精神科での治療内容
精神科では、心の病気そのものに焦点を当て、医学的根拠に基づいた治療を行います。
症状の種類や重症度に応じて、薬物療法を中心に、心理療法や入院治療などを組み合わせた総合的な対応がとられます。
1. 薬物療法(抗うつ薬・抗精神病薬・気分安定薬など)
精神科で最も一般的なのが、症状をコントロールするための薬物療法です。
脳内の神経伝達物質のバランスを整え、不安や抑うつ、幻覚・妄想などの精神症状を改善する効果があります。
代表的な薬には:
- 抗うつ薬: 気分の落ち込みや意欲の低下を改善
- 抗精神病薬: 幻覚、妄想、思考の混乱を抑える
- 気分安定薬: 躁うつの波を穏やかにする(双極性障害など)
- 抗不安薬・睡眠薬: 強い不安感や不眠の症状に対応
薬の種類や量は、症状や副作用の有無を見ながら医師が慎重に調整します。
「薬に頼りすぎたくない」「副作用が心配」という方も、遠慮なく医師に相談することで、自分に合った治療を進めることができます。
2. 心理療法(認知行動療法・精神療法など)
精神科でも、薬物療法と並行して、心理面へのアプローチが行われることがあります。
患者様が抱える不安や思考のクセ、人間関係の悩みなどに対しては、専門的なカウンセリングが用いられます。
代表的な心理療法:
- 認知行動療法(CBT): ネガティブな思考パターンを見直し、ストレスへの対処法を学ぶ
- 支持的精神療法: 安心できる対話を通じて感情を整理し、自己理解を深める
- 精神分析的アプローチ: 心の奥にある無意識の葛藤を探る
心理療法は症状の根本的な原因へのアプローチとなるため、再発防止にも効果的です。
3. 入院治療(安全で集中的なサポート)
症状が重く、自傷・他害のリスクがある場合や、家庭での療養が難しい場合には、専門病院での入院治療が選択されることもあります。
入院中は:
- 医師・看護師による24時間体制のサポート
- 薬の効果や副作用のきめ細かなモニタリング
- 作業療法や集団療法など回復を支える多面的なプログラム
が提供され、安全で安定した環境での治療が可能になります。
入院と聞くと抵抗感があるかもしれませんが、本人や周囲の安心を守るための前向きな選択といえます。
精神科では、患者様の状況や希望に応じた柔軟な対応が可能です
精神科では、一人ひとりの症状や背景、生活状況に合わせて治療方法が柔軟に調整されます。
「話を聞いてほしい」「薬はできるだけ少なくしたい」といった希望も、丁寧にくみ取ってくれるのが特長です。
心の不調を感じたら、「まだ大丈夫」と我慢するのではなく、医療の力を借りて前向きに回復を目指すという選択も大切です。
(出典:精神科ではどんな治療をするの?)
心療内科と精神科の違い
心療内科と精神科の違いを簡潔にまとめると、以下のようになります。
項目 | 心療内科 | 精神科 |
主な対象 | 心身症(体に現れる心の問題) | 精神疾患(心そのものの問題) |
症状の特徴 | 身体症状が中心 | 精神症状が中心 |
治療方法 | 心理療法や薬物療法、生活指導 | 薬物療法が中心 |
診療のアプローチ | 身体と心の両面を統合的に診る | 心理的・精神的な問題に直接対応 |
自分に合った診療科の選び方
「この不調、心から来ている気がするけれど、心療内科と精神科のどちらを受診すればいいのかわからない…」
そんな悩みを抱える方は少なくありません。
ここでは、自分の症状に合った診療科の選び方を、3つの視点からわかりやすく解説します。
1.身体に出る不調が主な場合 → 心療内科
- 胃痛、胸やけ、下痢、便秘などの消化器系の症状
- 頭痛、めまい、耳鳴り、肩こりといった慢性的な身体の不調
- 動悸や息苦しさ、慢性疲労、不眠などの身体症状が続いている
これらの不調に、検査では異常が見つからない、あるいはストレスとの関連が指摘されている場合は、心療内科が適しています。
心療内科では、「心の問題が体に出ている状態(心身症)」に着目し、ストレスと身体症状の関係に焦点を当てた治療が行われます。
体の不調が気になるけれど、心にも思い当たる節があるという方は、まず心療内科で相談してみましょう。
2.心の症状・感情の変化が強い場合 → 精神科
- 気分が落ち込む日が続く、泣きたくなる
- 急に不安に襲われる、動悸がして怖くなる(パニック)
- 物忘れが増えた、頭が働かない
- 寝つけない・途中で目が覚める・過眠が続く
- 幻覚や幻聴がある、人が怖い、考えがまとまらない
このように、思考や感情、行動に強い変化がある場合は、精神科の受診が適しています。
精神科では、うつ病・双極性障害・統合失調症・不安障害・PTSDなど幅広い心の病気を専門的に診断・治療します。
また、精神的な不調が長期間続いている、仕事や家庭生活に支障が出ている場合にも、精神科での総合的な評価が望ましいです。
3.どちらを選べばよいか分からないときは → 両方対応しているクリニックを選ぶのがおすすめ
「身体も心も不調がある」「どちらの症状が強いのか判断できない」など、はっきりした症状の分類が難しい場合は、
心療内科と精神科の両方を標榜しているクリニックを選ぶのが安心です。
こうした医療機関では、初診時に症状を総合的に聞き取ったうえで、最適な治療方針や科を提案してくれます。
どちらか一方を受診して「違ったかな?」と感じた場合も、院内で柔軟に対応してもらえるため、一歩踏み出しやすい環境が整っています。
迷ったときは、お気軽にまずは相談を
初めて受診する場合は、事前にクリニックの公式サイトを確認するのも有効です。
「どんな診療科があるのか」「どういった症状に対応しているのか」などをチェックし、電話やメールで相談できる窓口があるかも確認しましょう。
また、最近では女性医師在籍・完全予約制・土日診療可など、患者様のニーズに合わせた心療内科・精神科クリニックも増えています。
「自分らしく、安心して通える場所」を探すことも、治療の第一歩です。
まとめ
心療内科と精神科の違いを理解することで、自分に適した科を選びやすくなります。大切なのは、どちらの科でも、心身の健康をサポートしてくれる場所だということです。気になる症状がある場合は、早めに相談することをおすすめします。
つらい、苦しい、しんどいと感じる症状や悩みは、人それぞれです。決して我慢せずに、ぜひ気軽に専門の医師に相談してください。
心の不調や症状を明確にすることで、適切な治療や対策が見つかり、心身の健康を保つことができます。一人で抱え込まず、まずは気軽に専門家に相談してみましょう。
メンタルケア Lino clinic(リノクリニック)福岡天神院では、心や身体の不調や悩みに寄り添い、丁寧な診察とサポートを行っています。当日予約も可能で、土日祝日も20時まで診療しておりますので、お忙しい方でも通いやすい環境です。心配なことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。