更年期障害とは?
更年期障害とは、主に40代後半から50代前半にかけての女性に多く見られる症状で、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減少することによって引き起こされます。エストロゲンの減少により、自律神経のバランスが乱れ、身体的・精神的なさまざまな症状が現れることが特徴です。
更年期障害の主な症状
更年期障害の症状は多岐にわたり、個人差が大きいですが、以下のような症状が一般的に見られます。
身体的な症状
- ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり):突然顔や上半身が熱くなる。
- 発汗異常:異常に汗をかく、または逆に汗をかきにくくなる。
- 動悸・息切れ:心臓がドキドキしやすくなり、軽い運動でも息切れを感じる。
- めまい・耳鳴り:急に目の前が暗くなる、耳鳴りがする。
- 不眠:寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める。
- 関節痛・筋肉痛:特に朝起きたときに関節がこわばる。
- 肌や髪のトラブル:肌の乾燥やしわが増え、髪のツヤが失われる。
精神的な症状
- イライラしやすい:些細なことで怒りっぽくなる。
- 気分の落ち込み:抑うつ状態になりやすく、何事にも興味がなくなる。
- 不安感:漠然とした不安を感じる。
- 集中力・記憶力の低下:物忘れが増え、集中力が続かない。
更年期障害の原因
更年期障害は、主に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が急激に減ることで、心や体にさまざまな変化が起こる状態です。しかし、症状の出方やつらさには個人差があり、ホルモン以外にも多くの要因が関係しています。ここでは、更年期障害を引き起こす主な原因について詳しくご紹介します。
エストロゲンの急激な減少
更年期に入ると、卵巣の働きが徐々に低下し、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減ります。エストロゲンは以下のような役割を担っています。
- 自律神経のバランスを整える
- 気分の安定に関わる
- 骨密度や血管の健康を守る
- 肌や髪のうるおいを保つ
このホルモンが減ると、のぼせ・発汗(ホットフラッシュ)・動悸・イライラ・不安感・不眠など、さまざまな心身の不調が現れやすくなります。
ストレスの影響
40代〜50代は、家庭や仕事、親の介護などさまざまなストレスが重なる時期でもあります。加えてホルモンの変化が重なることで、心と体がストレスにとても敏感になるのが更年期の特徴です。
ストレスは自律神経のバランスを乱し、次のような症状を引き起こしやすくします。
- ホットフラッシュが強くなる
- 不眠が続く
- 気持ちが落ち込みやすくなる
- 疲れが抜けにくくなる
少しでもストレスを減らすために、趣味や好きなことに時間を使う・一人の時間をつくる・誰かに話すなど、気持ちを緩める工夫が大切です。
生活習慣の乱れ
不規則な生活や偏った食事、運動不足は、ホルモンや自律神経のバランスをさらに崩してしまう要因となります。
- 食生活の偏り → 栄養不足がホルモン合成や神経機能に影響
- 運動不足 → 血流が悪くなり、代謝や冷えに関係
- 睡眠不足 → 心と体の回復が妨げられ、疲労感が蓄積
更年期の症状を和らげるには、栄養バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠がとても重要です。体にやさしいリズムを取り戻すことで、症状が軽くなることもあります。
遺伝的な傾向
家族の中に、更年期障害がつらかった方がいる場合、同じように症状が出やすい傾向があるとされています。特に、母親や姉妹に強い症状があった場合、自分自身も早めに準備をしておくことが役立ちます。
更年期障害は、単にホルモンの問題だけでなく、心や生活のバランス全体が関係している繊細な状態です。
不調を「気のせい」と我慢せず、自分をいたわり、必要なときは専門家の力を借りることも大切です。
更年期障害 ― 受診の目安とは?
更年期の心身の変化は、「年齢のせいだから仕方ない」「いつか楽になるはず」と思って我慢してしまいがちです。しかし、無理を続けることで不調が長引いたり、生活に支障が出たりすることも少なくありません。
以下のような状態に心当たりがある場合は、一度医療機関を受診してみることをおすすめします。
日常生活に支障が出ているとき
- 疲れやすく、仕事や家事に集中できない
- 気分が落ち込み、何もやる気が出ない
- 不眠が続き、体力・気力が落ちてきた
- 外出や人と会うことがつらく感じるようになった
日常がいつものように過ごせないと感じたら、受診のサインです。放っておくと、心の不調が長引いてしまうこともあります。
心や体の症状が長く続いているとき
- のぼせ、発汗、動悸が何週間も治まらない
- 生理不順と一緒に強いイライラや不安感がある
- 腰痛や肩こり、頭痛など、体の不調が重なってつらい
- 体重の急な変動や、体型の変化が気になる
こうした症状が「なんとなく不調」の範囲を超えて日常を脅かすレベルになっている場合は、早めの受診が安心につながります。
周囲から「大丈夫?」と心配されるようになったとき
自分では「まだ大丈夫」と思っていても、家族や同僚から心配されるようになったときは、一つの目安と考えてみましょう。心と体の不調は、自分で気づきにくいこともあります。
我慢しすぎていると感じるとき
「いつもの自分じゃない気がする」「頑張っているのにうまくいかない」
そんなふうに感じることが増えているなら、それだけ心や体が疲れている証拠かもしれません。
更年期障害は、医師のサポートを受けることで症状が軽くなることも多く、適切なケアを受けることで毎日の過ごしやすさが大きく変わります。
我慢せず、安心できる場所でご相談を
更年期のつらさは、人には伝わりにくく、自分でも「気のせいかも」と思いがちです。でも、つらさに理由があるなら、それはきちんと向き合うべきサインです。
どんな症状でも、決して恥ずかしいことではありません。話を聞いてもらうだけでも気持ちが軽くなることがあります。
更年期障害の診断と治療
更年期に入ると、身体や心にさまざまな変化が起こります。しかしその不調が「更年期障害によるものなのか」「ほかの病気が隠れているのか」は、自分では判断が難しいものです。
まずは、医師の診察を受けることからスタートしましょう。
診断の方法
更年期障害の診断では、以下のようなステップを踏みます。
- 問診:症状の内容や生活状況、ストレスの有無などを詳しく確認
- 血液検査:女性ホルモン(エストロゲン、FSHなど)の値を測定
- 除外診断:甲状腺の異常や貧血、うつ病など、似た症状をもたらす他の病気がないかも確認します
特に「疲れやすい」「動悸がする」「気分が落ち込む」などの症状は、ほかの病気と区別がつきにくいため、専門的な視点が必要です。
更年期障害の治療法
更年期障害の治療は、「これをすれば治る」というものではなく、症状や体質に合わせて、複数の方法を組み合わせていくのが基本です。
ホルモン補充療法(HRT)
エストロゲンの減少が主な原因となる更年期症状に対し、不足しているホルモンを外から補う治療法です。
- 主に、ホットフラッシュ(のぼせ・発汗)、不眠、動悸、イライラなどの自律神経症状に効果が期待できます。
- 骨密度の低下を防ぐ効果もあり、生活の質(QOL)を高めるサポートとなります。
ただし、乳がんや血栓症のリスクを伴う場合もあるため、必ず医師と相談し、定期的な検診を受けながら慎重に進めることが大切です。
漢方薬
体質や気質に合わせて処方できるやさしいアプローチとして、多くの方に選ばれています。
- 加味逍遙散(かみしょうようさん):イライラ、不安、のぼせ、冷え、抑うつなど幅広い症状に対応
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):血流を良くし、肩こりや頭重感、月経不順の改善に効果が期待されます
漢方薬は、症状を総合的に整える力がある一方で、体質との相性が非常に重要です。自己判断ではなく、専門医のアドバイスのもとで取り入れることをおすすめします。
生活習慣の見直し
日々の習慣を整えることは、更年期障害の予防・改善の土台になります。
- バランスの取れた食事:特に、大豆イソフラボン(豆腐、納豆、豆乳など)はエストロゲンと似た働きがあり、女性の体にやさしく働きかけます。
- 適度な運動:ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、無理なく続けられる運動が自律神経を整え、気分の安定にもつながります。
- 質の良い睡眠:就寝前のスマートフォン使用を控え、ぬるめのお風呂やハーブティーなどでリラックスタイムをつくると、眠りの質が向上します。
心のケア(心理的アプローチ)
更年期は、「これまで通りにいかない自分」を受け入れなければならない時期でもあります。心の変化が大きく、自分でも戸惑いやすいタイミングです。
- カウンセリングやストレスマネジメントを取り入れることで、不安や孤独感、焦燥感を和らげることができます。
- 気持ちを言葉にして整理することで、本当につらかったことに気づくきっかけになることもあります。
更年期障害は、誰にでも起こる自然な変化のひとつです。けれど、「つらさ」や「戸惑い」の感じ方は人それぞれ。
一人で抱えず、心と体の声に耳を傾け、必要なサポートを受けながら、自分らしく過ごせる方法を見つけていきましょう。
(出典:日本産科婦人科学会 一般の皆様へ 産科・婦人科の病気「更年期障害」)
日常生活でできるセルフケア
更年期障害の症状は、人によって違いが大きく、体の不調だけでなく、心の揺らぎも伴うことがあります。
だからこそ、日々の生活の中で「自分にやさしくする時間」を少しずつ取り入れることが、とても大切です。ここでは、更年期症状をやわらげるためにできるセルフケアの工夫をご紹介します。
食事を見直して、ホルモンバランスをサポート
食べ物は、私たちの体と心に直結しています。更年期には、エストロゲンの減少をやさしくサポートする栄養素を意識して摂りましょう。
- 大豆製品(納豆、豆腐、豆乳):大豆イソフラボンが、女性ホルモンに似た働きをします。
- カルシウム・マグネシウム:骨や神経の安定に必要なミネラルです。小魚、海藻、アーモンド、バナナなどがおすすめ。
- ビタミンB群・ビタミンE:疲れやすさやイライラの軽減に役立ちます。豚肉、玄米、ナッツ類、アボカドなどから摂れます。
また、甘いもの・カフェイン・アルコールは体を冷やしたり自律神経を乱す原因にもなるため、摂りすぎに注意しましょう。
軽めの運動を習慣にする
激しい運動は必要ありません。ゆったりした運動で血流を促し、心と体をほぐすことが大切です。
- 朝のストレッチ
- 20分程度のウォーキング
- ヨガや深呼吸を取り入れたリラックス体操
運動によってセロトニン(幸せホルモン)が分泌され、気持ちが安定しやすくなるという効果もあります。無理せず「気持ちよく終われる程度」が続けるコツです。
睡眠環境を整える
更年期には不眠や中途覚醒に悩む方も多く、睡眠の質を上げることが症状緩和につながります。
- 寝る前1時間はスマホやパソコンを控える
- 照明を落として、ゆっくりとした音楽や読書でリラックス
- 入浴はぬるめのお湯(38〜40度)で20分程度
- ハーブティー(カモミールなど)で心を落ち着ける
「眠れない」ときは無理に寝ようとせず、布団の中で深呼吸だけでもOKです。
心を整える時間をつくる
更年期はホルモンの変化だけでなく、ライフステージの変化(子育ての終わり、親の介護、職場での立場の変化など)と重なり、心の揺らぎが出やすい時期です。
- 気持ちを紙に書き出して整理する
- 誰かと話す(専門家や信頼できる人)
- 「自分が嬉しい」と思える小さなことを日常に取り入れる
- 無理に頑張らない日をあえて作る
「頑張らないことを頑張る」のも、大切なセルフケアのひとつです。
小さなケアを、こつこつ積み重ねて
更年期は、体が変わるサイン。そして、今まで頑張ってきた自分に立ち止まる時間をくれる時期でもあります。
「ちゃんと食べる」「少し歩く」「5分だけでもぼんやりする」
そんな小さなセルフケアの積み重ねが、あなたの明日を少しずつ軽やかにしてくれるはずです。
まとめ
更年期は誰もが経験するライフステージの一つですが、その影響の程度は人によって異なります。自分に合った対策を取り入れ、無理をせず、必要に応じて専門医に相談することが大切です。
更年期障害で休職を考えている方へ
毎日頑張りすぎていませんか?環境の変化や職場のストレスで心身が限界を感じているなら、無理をせず一度立ち止まることも大切です。更年期障害は、無理を続けることで悪化し、長期の不調につながることもあります。
「心身ともに限界で、早急に休職したい…。」
「しっかり治して、また職場に戻りたい…。」
そんな思いを抱えている方が、安心して治療に専念できるよう、メンタルケア Lino clinic(リノクリニック)福岡天神院では、休職や復職のために必要な診断書を、最短即日で発行できる体制を整えております。少しでも早く、心と体を休められるよう、お気軽にご相談ください。
※症状や診断の内容によっては、当日に診断書を発行できない場合があります。適切な診断を行うために、詳細な問診や追加の評価が必要になることがあるためです。あらかじめご了承ください。
メンタルケア Lino clinic(リノクリニック)福岡天神院のご案内
更年期障害による気分の落ち込みや不安感は、日常生活に大きな影響を与えます。症状がつらいと感じたら、一人で悩まず専門医に相談することが大切です。メンタルケア Lino clinic(リノクリニック)福岡天神院では、患者様の心の健康を支えるために、専門的な診察と治療を提供しています。
当院は 土日祝日も診療 しており、赤坂駅や天神駅から徒歩圏内 とアクセスも良好です。仕事や家事で忙しい方も通いやすい環境を整えております。また、当日予約が可能 で、電話またはWEB予約 に対応しています。
更年期障害に伴う不調やメンタル面でのサポートが必要な方は、ぜひ当院までご相談ください。