男性更年期障害(LOH症候群)とは?
男性更年期障害(Late-Onset Hypogonadism:LOH症候群)は、加齢による男性ホルモン(テストステロン)の低下に伴い、心身にさまざまな不調が現れる状態を指します。一般的に40代以降に発症し、特に50代〜60代の男性に多く見られますが、生活習慣やストレスによって若年層でも発症することがあります。
男性ホルモンの減少は自然な現象ですが、急激に低下すると身体的・精神的な症状が顕著になり、日常生活に支障をきたすことがあります。本記事では、男性更年期障害(LOH症候群)の症状や原因、診断方法、治療法、予防策について詳しく解説します。
男性更年期障害(LOH症候群)の主な症状
男性更年期障害(LOH症候群)の症状は多岐にわたり、個人差がありますが、大きく以下の3つのカテゴリに分類されます。
身体的な症状
- 疲労感・倦怠感:慢性的な疲れが抜けず、体がだるい。
- 筋力低下・体力の衰え:以前よりも筋力が落ち、運動がしにくくなる。
- 性機能の低下:性欲の減退、勃起不全(ED)、朝勃ちの減少。
- 睡眠障害:寝つきが悪い、途中で目が覚める、熟睡できない。
- 発汗異常:汗をかきやすくなったり、異常なほてりを感じる。
- 皮膚や髪の変化:肌の乾燥やシワの増加、髪のコシが失われる。
精神的な症状
- イライラ・怒りっぽさ:些細なことで怒りを感じやすくなる。
- 気分の落ち込み・抑うつ:何事にも興味がなくなり、無気力になる。
- 集中力・記憶力の低下:仕事や会話中に注意が散漫になりやすい。
- 不安感・焦燥感:漠然とした不安を感じ、落ち着かなくなる。
メタボリック症候群との関連
- 内臓脂肪の増加:お腹周りの脂肪が増え、メタボリック症候群のリスクが上がる。
- 高血圧・高血糖:生活習慣病の発症リスクが高まる。
- 骨密度の低下:骨粗しょう症になりやすく、骨折の危険性が増す。
男性更年期障害(LOH症候群)の原因とは?
男性にも更年期がある――そう聞くと意外に思う方もいらっしゃるかもしれません。
「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」は、加齢やストレス、生活習慣の乱れなどによって、男性ホルモンの一種であるテストステロンが減少することで起こる不調です。以下に、主な原因について詳しく解説します。
加齢によるホルモン減少
テストステロンは、筋肉・骨・性機能・集中力・精神の安定など、男性の健康を多方面で支える重要なホルモンです。
このホルモンの分泌量は20代をピークに少しずつ低下し、40代を過ぎるころから自覚できる不調として現れることがあります。
代表的な症状には以下のようなものがあります。
- 疲れやすくなる
- やる気が出ない
- 集中力が続かない
- 筋力の低下
- 性欲や性機能の低下
これらは「年のせい」と思われがちですが、ホルモン低下が関係している可能性があるサインです。
ストレスの影響
現代社会において、慢性的なストレスはテストステロンの敵です。ストレスが続くと、コルチゾール(ストレスホルモン)が過剰に分泌され、それがテストステロンの分泌を抑えてしまいます。
- 精神的なストレス → 自律神経の乱れ → 睡眠や気分に影響
- 身体的なストレス(疲労や過労) → ホルモンバランスの乱れ
- ストレスによる生活習慣の乱れ → 運動不足・偏食・睡眠不足
このように、ストレスは間接的にも直接的にもテストステロンの減少を引き起こします。日々のストレスケアが、LOH症候群の予防にもつながります。
生活習慣の乱れ
不規則な生活や偏った食事、運動不足などの習慣は、ホルモンバランスを乱す大きな要因となります。
- 栄養バランスの偏り:インスタント食品や脂っこいもの中心の食生活は、ホルモンの生成に必要な栄養が不足します。
- 運動不足:筋肉の減少はテストステロンの低下を加速させます。適度な運動が大切です。
- 睡眠不足:睡眠中は成長ホルモンとともにテストステロンの分泌も活性化されるため、質の良い睡眠は必須です。
- 喫煙・飲酒:血流を悪化させ、ホルモン合成の妨げになるため、控えめに。
日常生活の小さな習慣の積み重ねが、テストステロンの維持を左右すると言っても過言ではありません。
持病や薬の影響
糖尿病や高血圧、肥満といった生活習慣病、あるいは慢性疾患を抱えていると、体内の代謝や血流が悪化し、テストステロンが作られにくくなることがあります。
- 糖尿病・メタボリックシンドローム:インスリン抵抗性がホルモン代謝に影響
- 高血圧や動脈硬化:血流障害により、ホルモンの運搬や分泌に支障
- 服用している薬:ステロイド、降圧剤、抗うつ薬などがホルモンに影響することも
体の健康状態を知ることは、男性ホルモンを守る第一歩です。定期的な健康診断も見直してみましょう。
「年齢のせいかも」「気のせいかも」と見過ごされがちな男性の不調。
けれど、それはテストステロンの低下=LOH症候群のサインかもしれません。
- なんとなくやる気が出ない
- 疲れやすい
- 気分が落ち込みやすい
- 眠りが浅い
- 性的な変化を感じる
こうした変化に心当たりがあるときは、一度専門の医師に相談してみることをおすすめします。「男性にも更年期がある」ことを知り、対策することが、人生の後半を快適に過ごす鍵となります。
男性更年期障害(LOH症候群)の診断と治療
年齢を重ねるにつれて「疲れが取れにくい」「気力が出ない」「性欲が低下した」などの変化を感じたことはありませんか?
これらの症状は、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下が原因となる「男性更年期障害(LOH症候群)」の可能性があります。
ここでは、LOH症候群の診断方法と治療法についてご紹介します。
診断方法
LOH症候群は、症状だけではなくホルモン値の確認や心身の状態の総合的な判断によって診断されます。
● 問診
まず、医師による問診で現在の症状や生活習慣について詳しく聞き取りを行います。
代表的な質問項目には以下のようなものがあります。
- 疲れやすさや集中力の低下
- 気分の落ち込みやイライラ
- 性機能の変化
- 睡眠の質や体重の変化
- 食事・運動・ストレスの状況
日常の中で感じている「なんとなく不調」を言葉にして伝えることが、診断の第一歩です。
● 血液検査(テストステロン値の測定)
LOH症候群の診断に欠かせないのが、血液中の「遊離テストステロン値(Free Testosterone)」の測定です。
- 基準値より低い場合、テストステロン不足が疑われます
- 特に朝の値が重要なため、午前中に採血を行うのが一般的です
症状が強くてもホルモン値が正常なこともあり、問診とあわせて総合的に評価されます。
● AMSスコアの活用
AMS(Aging Males’ Symptoms)スコアは、男性更年期の自覚症状を数値で把握するための質問票です。
- 疲労感、抑うつ、睡眠障害、性機能、筋力低下などについて質問されます
- 点数が高いほど、更年期症状の可能性が高いとされます
医師が診断の参考にするほか、治療効果の経過をみるためにも使われることがあります。
治療方法
LOH症候群の治療は、ホルモン補充だけに頼らず、生活改善や心理的サポートなども含めた総合的なアプローチが基本です。
● ホルモン補充療法(HRT)
テストステロンが著しく低下している場合、男性ホルモンを補う治療(HRT:ホルモン補充療法)が行われます。
- 注射・塗り薬・貼付薬などの方法でテストステロンを補充
- 気力や性欲、筋力の改善などが期待されます
ただし、前立腺がんや多血症などのリスクもあるため、定期的な血液検査やPSA検査を行いながら、安全性に配慮して進めていきます。
● 生活習慣の改善
ホルモンバランスを整えるためには、日々の生活を見直すことが何より大切です。
- 栄養バランスの取れた食事(タンパク質・亜鉛・ビタミンDなどを意識)
- 毎日の軽い運動(筋力維持・血流改善)
- 睡眠の質を高める習慣(寝室環境、入浴、就寝前のスマホ断ち)
- 禁煙・節酒の意識
生活の土台を整えることは、テストステロンの自然な分泌をサポートします。
● 漢方薬の活用
体質に合わせて選べる漢方薬も、LOH症候群のサポートとして用いられることがあります。
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):体力低下、倦怠感、集中力の低下に
- 八味地黄丸(はちみじおうがん):冷え、頻尿、性機能の衰えなどに対応
副作用が少なく、体質改善を目指したい方におすすめの治療法です。漢方専門の医師に相談するとより安心です。
● ストレス管理・心理的ケア
心のストレスもLOH症候群に大きく影響します。
- カウンセリングを受けて思いを整理する
- マインドフルネスや深呼吸で緊張をほぐす
- 趣味や人との交流を大切にする
「話す・緩める・楽しむ」ことが、ホルモンにもよい影響を与えてくれます。
LOH症候群は、年齢に伴う自然な変化とはいえ、放っておくと生活の質が大きく損なわれることもあります。
「いつもの自分と違う」と感じたときは、無理に我慢せず、心身の状態を一度立ち止まって見つめてみましょう。
治療やセルフケアで、再び活力を取り戻すことは十分に可能です。
まずは相談から、始めてみませんか?
(出典:一般社団法人日本内分泌学会 男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群))
不調を感じたときの対処法
「最近、疲れが抜けない」「やる気が出ない」「以前の自分と何かが違う」
そんなふうに感じたとき、それは心や体からの“小さなサイン”かもしれません。
男性更年期障害(LOH症候群)の不調は、見た目ではわかりにくいため、「気のせいかな」と我慢しがちです。
でも、不調に気づいた“今”こそが、自分を整えるチャンス。ここでは、日常でできるやさしい対処法をご紹介します。
「休む」ことをためらわない
疲れを感じたとき、無理をして動こうとするのではなく、まずは一度立ち止まることが大切です。
- 何もせず、静かな時間を10分だけ持つ
- 自分に「疲れてるのは自然なこと」と声をかける
- 休日に予定を入れず、ただ休むことを目的にする
「立ち止まること=怠けること」ではありません。
体も心も、エネルギーを取り戻すための準備期間です。
不調を“見える化”してみる
感じている不調を、紙に書き出してみると、気持ちが整理されて少し楽になることがあります。
- 疲れていると感じるとき → いつ?どんなとき?
- 気分が落ち込んだとき → 何がきっかけ?
- 睡眠の質や性欲の変化など → 気になることを正直に書く
日々の変化を記録しておくと、自分の状態に客観的に気づくヒントになります。
ひとりで抱え込まない
「相談するのが苦手」「話しても理解されない気がする」
そう思っている方ほど、一度、誰かに話してみてください。
- パートナーや家族に「最近調子が良くないんだ」と相談してみる
- 信頼できる友人に、短くでも気持ちを伝えてみる
- 必要であれば、医療機関でカウンセリングを受けてみる
言葉にすることで、気持ちが整理され、自分の状態を冷静に見つめ直すことができます。
「できること」を少しだけやってみる
不調のときは、「何かしなきゃ」と焦るよりも、ほんの少しの行動から始めることが大切です。
- 部屋の換気をする
- 温かいお茶をゆっくり飲む
- ストレッチを3分だけ
- 好きな音楽を1曲だけ聴く
どれも“頑張らないセルフケア”です。
ほんの少し体を動かす、何かを整えることで、気分が少しずつ前向きになることがあります。
不安が続くときは、専門医に相談を
セルフケアをしても改善が見られない場合や、「これ以上は一人では難しい」と感じたときは、迷わず医療機関に相談しましょう。
- 血液検査でテストステロンの値を確認
- ライフスタイルに合った治療法の提案
- 心のケアも含めた総合的なサポート
不調の原因がわかることで、気持ちが軽くなることもあります。診断は「安心につながる手段のひとつ」です。
不調を感じるときほど、「自分らしくいられない」もどかしさや焦りがあるかもしれません。
けれど、心と体は休息を必要としているだけ。
無理せず、丁寧に、やさしく整えることで、また少しずつ元気が戻ってきます。
「気づいた今」が、向き合う最適なタイミングです。
まとめ
男性更年期障害(LOH症候群)の症状は、ストレスや生活習慣とも関連しており、適切な治療や生活改善が必要です。ホルモン補充療法や生活習慣の見直し、心理的サポートを受けることで、症状の軽減が期待できます。早期に気づき、専門的なサポートを受けることが、改善への第一歩です。
男性更年期障害(LOH症候群)で休職を考えている方へ
毎日頑張りすぎていませんか?環境の変化や職場のストレスで心身が限界を感じているなら、無理をせず一度立ち止まることも大切です。男性更年期障害(LOH症候群)は、無理を続けることで悪化し、長期の不調につながることもあります。
「心身ともに限界で、早急に休職したい…。」
「しっかり治して、また職場に戻りたい…。」
そんな思いを抱えている方が、安心して治療に専念できるよう、メンタルケア Lino clinic(リノクリニック)福岡天神院では、休職や復職のために必要な診断書を、最短即日で発行できる体制を整えております。少しでも早く、心と体を休められるよう、お気軽にご相談ください。
※症状や診断の内容によっては、当日に診断書を発行できない場合があります。適切な診断を行うために、詳細な問診や追加の評価が必要になることがあるためです。あらかじめご了承ください。
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