過敏性腸症候群(IBS)とは?
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome、以下IBS)は、腸に炎症や異常がないにもかかわらず、慢性的な腹痛や下痢、便秘などの症状が現れる疾患です。消化器系の機能的な問題が原因とされており、日本でも多くの人がこの症状に悩まされています。
過敏性腸症候群(IBS)は、日常生活に大きな支障をきたすことがあるため、適切な治療や生活習慣の見直しが必要です。本記事では、過敏性腸症候群(IBS)の原因や症状、診断方法、治療法について詳しく解説します。
過敏性腸症候群(IBS)の主な症状
過敏性腸症候群(IBS)は、消化管に明らかな異常が見られないにもかかわらず、腹痛や便通の異常などが繰り返し現れる病気です。症状には個人差がありますが、日常生活に支障をきたすこともあるため、特徴を知っておくことが大切です。
腹痛やお腹の不快感
最も多く見られる症状のひとつが、腹痛やお腹の張った感じ、不快感です。この痛みは「トイレに行くと一時的に軽くなる」という特徴がありますが、しばらくするとまた現れることが多く、繰り返す傾向があります。
痛みの強さや感じ方には個人差があり、ストレスを感じたときや食後などに悪化しやすいという特徴もあります。お腹が「キリキリ」「シクシク」と痛んだり、「重たい感じ」「ガスがたまっているような感じ」と表現されることもあります。
便通の異常(下痢・便秘・その両方)
IBSでは便通にも変化が現れます。タイプによって次のように分類されます。
- 下痢型(IBS-D):急に強い便意を感じて、トイレに駆け込むことが多く、水のような便や柔らかい便が頻繁に出ます。特に、出勤前や外出前に症状が出やすく、生活に支障が出る方もいます。
- 便秘型(IBS-C):数日間便が出なかったり、出てもコロコロとした硬い便だったりするタイプです。排便に時間がかかり、強くいきんでもなかなか出ないことがあります。
- 混合型(IBS-M):下痢と便秘が交互に現れ、「今日は下痢、昨日は便秘だった」といったように変動が激しいのが特徴です。
- 分類不能型(IBS-U):上記のいずれにも当てはまらないが、便通の不調を感じるタイプです。
お腹の張りやおならが増える(膨満感・ガス)
IBSでは、腸の動きが過敏になることでガスがたまりやすくなります。これにより、お腹の張り(膨満感)を強く感じたり、頻繁におならが出たりすることがあります。
特に「お腹がパンパンに膨れて苦しい」「ガスが抜けない感じがして痛い」というような不快感が日常的に続くこともあります。こうした症状も、周囲に相談しづらく一人で悩んでしまう方が多いのが特徴です。
排便後も「スッキリしない」残便感
排便した後にも「まだ出きっていない感じがする」「トイレに何度も行きたくなる」といった残便感を感じることがあります。特に便秘型の方に多く見られますが、腸の神経が過敏になっているため、実際には便が残っていなくても違和感が続くことがあります。
このような「排便したはずなのに満足感がない」という感覚も、IBSの特徴的な症状のひとつです。
必要に応じて、さらに「IBSとストレスの関係」や「治療・対処法」などもこの後に繋げられる構成にすることができます。ご希望があれば続きのセクションもご提案いたします。
(出典:厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』「過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome:IBS)と補完療法について知っておくべき7つのこと」)
過敏性腸症候群(IBS)の原因
過敏性腸症候群(IBS)は、腸に炎症や潰瘍などの明らかな異常が見つからないにもかかわらず、繰り返し腹痛や便通のトラブルが現れる病気です。はっきりとした原因はまだ解明されていませんが、いくつかの要因が関わっていると考えられています。
ストレスや心の影響
IBSの発症や悪化には、心の状態が深く関係しているといわれています。特に、仕事や家庭、人間関係などから受けるストレスが大きいと、自律神経のバランスが乱れやすくなります。
自律神経は、腸の動きをコントロールしているため、そのバランスが崩れると腸の働きが過敏になり、下痢や便秘、腹痛が起こりやすくなるのです。また、ストレスが長引くことで、腸がさらに敏感になってしまい、不快な症状が続いたり悪化したりすることもあります。
腸が敏感になっている状態(腸の過敏性)
IBSの方は、腸の神経が通常よりも過敏に反応しているといわれています。そのため、普通なら気にならない程度の食事内容やちょっとした環境の変化、冷えなどにも腸が過剰に反応してしまうことがあります。
たとえば、冷たい飲み物や脂っこい食べ物、香辛料の強い料理などをとると、お腹が痛くなったり、急にトイレに行きたくなったりすることがあるのです。また、緊張や焦りといった些細なストレスも、腸に影響を及ぼす場合があります。
腸内環境の乱れ
私たちの腸内には、数百種類もの細菌が共存していて、体の健康に大きく関わっています。IBSでは、この腸内細菌のバランスが乱れていることが指摘されています。
悪玉菌が増えてしまうと、腸内でガスが発生しやすくなり、膨満感やおなら、腹痛の原因になることがあります。また、善玉菌が減ってしまうと、腸の動きも不安定になり、下痢や便秘を引き起こしやすくなるのです。
発酵食品(ヨーグルト、納豆、キムチなど)や食物繊維(野菜、海藻、豆類など)を取り入れることで、腸内環境を整えることがIBSの症状緩和につながることがあります。
食生活の影響
IBSの症状は、どんな食べ物を食べるかによっても左右されます。
特に、以下のような食品は腸を刺激しやすく、症状を悪化させることがあるため注意が必要です。
- 脂っこい料理(揚げ物、こってりしたもの)
- カフェインを含む飲み物(コーヒー、紅茶)
- アルコール
- 香辛料の強い食べ物
- 炭酸飲料
これらは腸の動きを強めたり、腸内にガスを発生させたりするため、腹痛やお腹の張り、便通異常を引き起こすことがあります。
症状を抑えるためには、刺激の少ない食事に切り替え、自分の体に合った食べ物を見つけることが大切です。
過敏性腸症候群(IBS)の診断方法
過敏性腸症候群(IBS)は、腸の機能に問題があるにもかかわらず、検査をしても目に見える異常が見つからない「機能性疾患」のひとつです。診断にはいくつかのステップがあり、他の病気との見分けも重要になります。
医師による問診
診断の第一歩は、丁寧な問診です。
医師は、次のような点を中心に、患者様の症状を詳しく伺います。
- どのようなタイミングで腹痛や不快感が起きるか
- 便の状態や回数の変化について
- 排便後に症状が軽くなるかどうか
- 最近の生活状況やストレスの有無
- 食事内容や生活習慣の傾向 など
こうした情報をもとに、IBSの可能性を検討していきます。
「ローマ基準」による評価
過敏性腸症候群(IBS)の診断には、国際的な診断基準である「ローマ基準」が用いられます。これは、機能性消化管疾患の診断のために作られた指標で、以下のような条件を満たす場合にIBSと診断されます。
- 直近3か月間のうち、月に少なくとも1回以上の腹痛がある
- 腹痛は以下のいずれかと関連している
・排便によって症状が軽くなる
・便の頻度が変わる(多くなる・少なくなる)
・便の形状が変わる(硬くなる・柔らかくなる)
これらを医師が確認し、患者様の訴えと照らし合わせて診断に活かします。
除外診断(ほかの病気との見分け)
IBSは機能的な異常であるため、他の重い病気と区別することがとても大切です。
そのため、必要に応じて以下のような検査を行うことがあります。
- 大腸内視鏡検査:腸の中に炎症やがんなどの異常がないかを確認
- 血液検査:感染症や炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎など)の有無をチェック
- 便潜血検査:目に見えない出血がないかを調べる
特に、血便・体重の急な減少・40歳以上での初発症状などがある場合は、慎重に他の病気の可能性を除外する必要があります。
診断後の対応
IBSと診断されたあとは、生活習慣の見直しやストレス対策、必要に応じた薬物療法を行い、症状のコントロールを目指します。
IBSは完治が難しい場合もありますが、症状とうまく付き合っていくことで、日常生活の質を大きく改善することができます。
過敏性腸症候群(IBS)の治療法
過敏性腸症候群(IBS)の治療は、原因そのものを取り除くというよりも、症状を和らげて日常生活を送りやすくすることが目的です。治療は人それぞれの症状や生活背景に合わせて行われます。
生活習慣の見直し
まずは、日々の生活を整えることがIBSの改善につながります。特に次のようなポイントが大切です。
- ストレス管理
IBSの症状はストレスに敏感に反応するため、心のケアがとても重要です。深呼吸、瞑想、ヨガ、音楽、趣味の時間など、自分なりのリラックス法を見つけてみましょう。必要に応じて、カウンセリングなどの心理的サポートを受けるのも効果的です。 - 食事の工夫(低FODMAP食など)
IBSの方は特定の食べ物で症状が悪化することがあります。最近注目されているのが「低FODMAP食」です。これは、小腸で吸収されにくい発酵性の糖質(例:玉ねぎ、にんにく、小麦、りんごなど)を控える食事方法で、お腹のガスや不快感を軽減する効果があるとされています。まずは食事内容を記録し、自分に合う・合わない食品を把握することから始めてみましょう。 - 規則正しい生活
十分な睡眠と、適度な運動(ウォーキングやストレッチなど)も腸のリズムを整えるために役立ちます。日常の中で無理なく取り入れることがポイントです。
薬物療法(症状に応じた対応)
症状が強く、生活に支障をきたしている場合は、医師の判断でお薬を使うこともあります。
- 下痢型(IBS-D):止瀉薬(下痢を抑える薬)、整腸剤、セロトニン受容体拮抗薬(腸の動きを落ち着かせる薬)などを使用します。
- 便秘型(IBS-C):便を柔らかくする下剤や、腸の動きを整える薬が処方されます。
- 混合型(IBS-M):下痢と便秘が交互に出るため、その時の状態に応じて薬を使い分けることが大切です。
薬の使用はあくまで「対症療法」なので、生活習慣の改善と併せて取り組むことが勧められます。
心理療法(心と腸をつなぐアプローチ)
IBSは「脳腸相関(のうちょうそうかん)」といって、脳と腸の関係が密接であることが知られています。そのため、心のケアが症状改善に直結することもあります。
- 認知行動療法(CBT):不安やストレスの感じ方、考え方のクセに働きかけ、症状をやわらげる心理療法です。医療機関や専門のカウンセラーが対応します。
- 自律神経調整法:呼吸法やリラクゼーションを通して、交感神経と副交感神経のバランスを整える方法です。過緊張を和らげることで、腸の働きも安定しやすくなります。
過敏性腸症候群(IBS)のセルフケア
過敏性腸症候群(IBS)は、長く付き合っていく必要があることも多い疾患です。日々のちょっとした心がけが、症状の緩和に大きな影響を与えることがあります。ここでは、自宅でできるセルフケアのポイントをご紹介します。
ストレスとの上手な付き合い方
IBSの症状はストレスに敏感に反応します。大切なのは、「ストレスをなくす」のではなく「うまく対処する」という視点です。
- 自分なりのリラックス法を見つける(音楽、入浴、アロマなど)
- スケジュールを詰めすぎず、余白をつくる
- 気持ちを言葉にして外に出す(信頼できる人と話す、日記を書く など)
- 必要であれば、カウンセリングを利用することも効果的です
緊張しやすい場面では、深呼吸やマインドフルネスを取り入れるのもおすすめです。
食事の工夫
IBSのセルフケアでは、腸にやさしい食事を意識することが大切です。
- 低FODMAP食を試す(例:ネギ類・豆類・小麦などを控えめに)
- 脂っこい料理や刺激の強い香辛料は控える
- カフェインや炭酸、アルコールは体調に応じて調整
- 発酵食品や食物繊維を取り入れる(ヨーグルト、納豆、わかめ、玄米など)
※人によって合う・合わない食品は異なるため、食事記録をつけて振り返るのも有効です。
腸のリズムを整える生活習慣
腸は毎日のリズムにとても敏感です。以下の習慣が腸の安定につながります。
- 起きる時間・寝る時間をできるだけ一定に
- 朝食をしっかりとる(腸の目覚めを助けます)
- 軽い運動を習慣にする(ウォーキングやストレッチなど)
- トイレを我慢しない、無理に出そうとしない
特に睡眠不足や寝起きの不規則さは、自律神経の乱れを招きやすく、IBSの悪化につながることがあるため注意が必要です。
心と体に「休む時間」をつくる
「お腹の調子が悪い」と感じていても、周囲にはなかなか理解されにくいことがあります。
そんなときこそ、自分自身の感覚に丁寧に耳を傾けてあげることが大切です。
- 無理にがんばりすぎない
- 体調の波を受け入れる
- 疲れたときはしっかり休む
IBSは「見えにくい不調」だからこそ、自分を責めず、やさしく過ごすことが回復の鍵になります。
まとめ
過敏性腸症候群は、見た目ではわかりにくい症状だからこそ、ひとりで抱え込まず、自分に合ったケアを見つけることが大切です。症状には波があり、焦る気持ちになることもあるかもしれませんが、少しずつ心と体を整えていくことで、日常をより穏やかに過ごせるようになります。
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